『夜のくもざる』村上春樹2019-08-10

2019-08-10 當山日出夫(とうやまひでお)

夜のくもざる

村上春樹(文).安西水丸(絵).『村上朝日堂超短篇小説 夜のくもざる』(新潮文庫).新潮社.1998 (平凡社.1995)
https://www.shinchosha.co.jp/harukimurakami/books/100144.html

続きである。
やまもも書斎記 2019年8月5日
『水底の女』村上春樹訳
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/05/9137577

村上春樹の長編、短篇と読んで、次に翻訳をいくつか読んで、レイモンド・チャンドラーの村上春樹訳を読んだ。そして、手にしたのが、この本である。「夜のくもざる」という作品は、『世界は村上春樹をどう読むか』のなかで、それをどう外国語に翻訳するか、という課題としてつかってあったので目にした。これを読んで、とても面白いと思ったので、文庫本を買って読むことにした。

やまもも書斎記 2019年7月4日
『世界は村上春樹をどう読むか』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/07/04/9111158

短篇というよりは、掌編、あるいは、ショートショートと言った方がいいかもしれない。短いものだと、二ページほどでおさまってしまう。それも、文庫本としては、大きめの活字で、しかも、行間をあけて組版がしてあるので、普通に組版したら、一ページで収まってしまうほど短いものがある。あとがきを読むと、この作品は、広告につかわれたものを編集して作ったらしい。(あいにく、私は、一般の雑誌というものを、ほとんど読むことがないせいもあって、この広告のことは、まったく知らなかった。)

ともあれ、読んでの印象は、面白い、これにつきる。だが、どこが面白いのかと言われると困ってしまうのだが、とにかく、どの作品も読み始めてすぐに、村上春樹の物語世界……それも掌編という形式における……にはいりこんでしまう。摩訶不思議な物語空間である。そして、たくみな「ことば」の使い手でることが実感できる。

たぶん、この作品を書きながら作者は、楽しんで書いていただろうと感じるところがある。(そして、このことは、あとがきでも、著者自身が述べていることでもある。)

「ことば」によって、虚構の世界を作りあげる類い希なる想像力、創造力、である。まさに村上春樹は、「ことば」の才人であると思う。長編、短篇、それから、翻訳のいくつかと読んできて、この本を読んで村上春樹の小説家、物語の書き手としての才能を見る気がする。

どれも気楽に読める内容のものであるが、村上春樹の文学者としての資質を考えるうえでは、重要な作品であるにちがいない。

次は、『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』である。

追記 この続きは、
やまもも書斎記 2019年8月29日
『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/29/9146784

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