『いだてん』あれこれ「トップ・オブ・ザ・ワールド」2019-08-20

2019-08-20 當山日出夫(とうやまひでお)

『いだてん~東京オリムピック噺~』2019年8月18日、第31回「トップ・オブ・ザ・ワールド」
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/story/031/

前回は、
やまもも書斎記 2019年8月13日
『いだてん』あれこれ「黄金狂時代」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/13/9140425

この回で印象的だったのは、やはりアメリカ日系人の人びとの描き方であろう。

ロサンゼルスのオリンピック、その水泳競技で日本人選手は大活躍する。その活躍に、アメリカで生活している日系移民の人びとは、歓喜することになる。ここでのポイントは、次の二点になるだろうか。

第一には、メダルを取った選手だけではなく、それ以外の日本人選手団の心のうちを描いていたことである。日本をはなれて、異国の地でオリンピックに出場する、その孤独感、また、プレッシャー、様々な心のうちの様子を多面的に描いていた。

第二には、その当時のアメリカ日系人の人びとを描いていたこと。時代的背景としては、アメリカにおける日系移民への排斥がはじまっていたころになる。人びとは、アメリカ人として、自由に平等に生きられたということでは、必ずしもない。(その後、太平洋戦争になり、日系人強制収容所が作られ、また、日系人の兵士たちも、「アメリカ人」として戦争に参加したことは知られていることであろう。)

以上の二つのポイントが、今回の見どころかと思う。

歴史的には、この次がベルリンであり、「民族の祭典」となる。そして、幻に終わる一九四〇(昭和一五)年の東京オリンピックになる。「参加することに意義がある」と言ったオリンピックの理想が、国際政治の流れのなかで翻弄される時代を迎えることになる。

ところで、日本におけるオリンピックの歴史において、私の記憶にある「バロン西」。本編での登場ではなく、終わりの紀行のところで紹介されていた。ここのあたり、ちょっと残念な気がしないではない。水泳をメインに描くストーリーとはいえ、バロン西の登場があってもよかったのではないだろうか。

次回以降、この国際情勢のなかのオリンピックが描かれていくことになるのだろう。金栗四三もまた登場するようだ。楽しみに見ることにしよう。

追記 2019-08-27
この続きは、
やまもも書斎記 2019年8月27日
『いだてん』あれこれ「独裁者」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/27/9145981