『なつぞら』あれこれ「なつよ、新しい命を迎えよ」2019-08-25

2019-08-25 當山日出夫(とうやまひでお)

『なつぞら』第21週「なつよ、新しい命を迎えよ」
https://www.nhk.or.jp/natsuzora/story/21/

前回は、
やまもも書斎記 2019年8月18日
『なつぞら』あれこれ「なつよ、笑って母になれ」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/18/9142363

なつは女の子を出産することになった。この週は、出産と育児にまつわる顛末である。

第一に、出産のこと。

これについては、北海道から、母・父、それに爺さんまで出てきて、どうにか無事に終わったことになった。ちょうど陣痛のはじまるころに、登場というのも、都合のいいような気がしないではないが、しかし、これが、夫の一久とふたりだけだったら、どんなにか不安であったろう。

第二には、育児のこと。

なつは、産休をとって子どもを産んだのだが、その後は、仕事に復帰することになる。育児の担当は、一久である。これも、なれないなりに、なんとかこなしているように描かれていた。

以上、出産と育児を軸に、この週は展開したのであるが、いろいろ議論のあるところもあるかもしれない。それは、働く女性が、子どもを産み、子育てをしながら、仕事を続けることの難しさである。これは、今の時代においても残っている課題である。いや、現代の方がより深刻であるともいえるだろう。

週の最後になって、乳児から預かってくれる保育所はみつからなかった、というところで終わっていた。これが、今後は、どうなるのだろうか。

子どもを産んだ後、会社に復帰したなつは、職場でみんなにあたたかくむかえてもらっているようだ。この意味では、理解のある職場ということになる。しかし、子育てと仕事と両立させながら、さらに、女性のアニメーターとして仕事を切り拓いていくことになるであろう、なつにとって、今後どのような試練がまっているのであろうか。

育児と仕事……この問題をこのドラマはどう描くのであろうか。ただ、職場の個々人の理解がある、家庭において夫の手助けがある、これだけではないことでもある。社会の制度、会社の組織、そして、世の中全体の意識、これらの総合のうえに可能になることである。

ところで、BSで再放送の『おしん』においては、まさに、働く女性が子どもを産み、育てる物語でもある。奇しくも『なつぞら』で登場した産科医は田中裕子であった。歴史的にみれば、女性が働きながら出産、育児にたずさわるということは、当たり前であったともいえる。「専業主婦」という存在自体が、近代になってからのある種の虚構のようなものかもしれない。

ともあれ、次週、育児と仕事をどのように描くことになるのか、楽しみに見ることにしよう。

追記 2019-09-01
この続きは、
やまもも書斎記 2019年9月1日
『なつぞら』あれこれ「なつよ、優しいわが子よ」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/01/9147934