『人生のちょっとした煩い』グレイス・ペイリー/村上春樹訳2019-09-18

2019-09-18 當山日出夫(とうやまひでお)

人生のちょっとした煩い

グレイス・ペイリー.村上春樹訳.『人生のちょっとした煩い』(文春文庫).文藝春秋.2009 (文藝春秋.2005)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167705725

つづきである。
やまもも書斎記 2019年9月16日
『村上朝日堂』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/16/9154069

このところ、村上春樹の翻訳小説、その合間に「村上朝日堂」のような軽い感じの作品、といろいろと読んでいる。翻訳としては、『フラニーとズーイ』につづけて読んだことになる。

やまもも書斎記 2019年9月14日
『フラニーとズーイ』村上春樹訳
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/14/9153219

この作品(短編集)、もし村上春樹が訳していなかったら生涯、手にとることはなかっただろうと思う。しかし、読んで損をした気分にはならない。充実した読後感のある作品である。

著者は、ロシア系ユダヤ人の女性作家、ニューヨークに生まれた。寡作な作家で、作品集としては、ここでとりあげた『人生のちょっとした煩い』をふくめて三冊しか本(小説)を出していないという。だが、アメリカにおいては、強烈なファンが多くいるらしい。

本の刊行された順でいうと、日本語訳の『人生のちょっとした煩い』が、最初に出た作品集になる。日本での翻訳では、二冊目の『最後の瞬間のすごく大きな変化』の方が先に刊行になっている。これも村上春樹訳である。

読んでみての読後感としては……たぶん「短編小説」という文学の形式が、二〇世紀後半のアメリカにおいて実をむすんだ傑作とでも言うことができようか。しかし、はっきり言って、よくわからない、難解な作品もある。

とはいえ、なかには、おそらくは第二次大戦後のアメリカのニューヨークの、ある種類の人びとの日常にまつわる感覚を見事にとらえていると感じさせる作品がある。小説を読む面白さの醍醐味があると言っても過言ではない。それを「短編小説」という形式の文学でもって、見事に描き出している。なるほどアメリカにおいて熱烈なファンがいるのも道理とうなづけるところがある。

つづけて、二冊目の短編集『最後の瞬間のすごく大きな変化』を読んでみたい。

追記 この続き(村上春樹)は、
やまもも書斎記 2019年9月20日
『村上朝日堂の逆襲』村上春樹・安西水丸
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/20/9155648