新潮日本古典集成『源氏物語』(三)2019-12-09

2019-12-09 當山日出夫(とうやまひでお)

源氏物語(3)

石田穣二・清水好子(校注).『源氏物語』(三)新潮日本古典集成(新装版).新潮社.2014
https://www.shinchosha.co.jp/book/620820/

続きである。
やまもも書斎記 2019年12月2日
新潮日本古典集成『源氏物語』(二)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/12/02/9183986

『源氏物語』を読んでいる。岩波文庫でも読んでおきたいが、まだ全巻完結していない。が、これは、これとして、既刊分について読んでおくつもりではいる。新編日本古典文学全集のテキストが、今ではもっとも一般的なテキストであることは理解しているつもりではいるが、このシリーズは、現代語訳を見なければならないのが、読んでいてわずらわしい。『源氏物語』は、いくら古文を読むことができるからといって、その本文だけで理解できるというものではない。書かれてから千年以上にわたって、読み継がれてきた歴史の積み重ねの上に、現代の校注本がある。

新潮版で読んでみての第三冊目である。この本については、すでに書いている。

やまもも書斎記 2019年2月22日
『源氏物語』(三)新潮日本古典集成
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/02/22/9039182

再度読んでみて、基本的な印象は変わらない。特に「少女」の巻が難解である。いや難解というのとはちょっと違うかもしれない。なんとか注釈を読めば理解できるのだが、光源氏、内大臣(頭中将)、夕霧、雲居雁……これらの登場人物の錯綜するこころの動きをおっていくのが、骨がおれる。

それが、「玉鬘」の巻になると、すっかり雰囲気がかわる。西国で生い育った玉鬘が、京にでてきて、長谷寺で右近とめぐりあうというストーリーは、きわめて説話的である。この箇所は、明らかに観音霊験譚として書かれたものであろう。(このような霊験譚は、『今昔物語集』のなかにあってもおかしくない。)

ところで、なんで『源氏物語』を読んでいるかというと、(すでに書いたことであるが)その理由の一つとして、「書く」ということ、「文字」ということがある。『源氏物語』の登場人物たちは、たしかに「文字」を書いている。「文字」「消息」「歌」によるコミュニケーションで、意思疎通をはかり、行動している。これは、とりもなおさず、『源氏物語』が書かれ読まれた平安貴族の社会において、「文字」というものが一般化していたことと、表裏一体をなすものであろう。

こんなこと、ちょっと調べれば、先行研究の論文があるだろうと思うのだが、もう、老後の楽しみの読書である。自分の目でテキストを読みながら、確認していきたいと思って、付箋をつけながら読んでいる。「文字」によるコミュニケーションを基盤としたところに、『源氏物語』が書かれていることが、読みながら確認できる。(これは、先行研究を軽んずる意味ではない。もう限られた時間の使い方として、何よりも自分の目でテキストを読むことを優先させたいのである。また、『源氏物語』全体を通じて、「文字」「書く」「仮名」というようなことがどう書かれているかは、自分の目で全体を読み通しながら考えるしかないことでもある。)

これはすでに知られていることだが、「草(そう)」ということばがでてくる。「草仮名」のことである。「仮名」(=平仮名)ではない、また、「真名」(=漢字)でもない、草書体の万葉仮名ということになる。この「草」が実際に『源氏物語』のどの部分に、どのように出てくるのか、自分の目で読んで確かめておきたくもある。

そして、「少女」の巻など、ああでもないこうでもない、いややはりああしようかこうしようか……あれこれと悩む心中については、たぶん、耳で聴いただけでは理解できるものではないだろう。目で読む「文字」の文学としてでなければ、読めないと思われる。そして、それが今において読めるのは、この『源氏物語』が書かれてからずっと読まれてきた歴史があるからである。でなければ、どうして、この文言の解釈がどうしてそのようになるのか、表面の字面だけでは、到底理解できるものではない。

秋の授業がはじまるまでに、『源氏物語』を最後まで通読しておきたいと思う。(追記、これを読んで文章を書いたのが夏のうちだった。)

追記 2019-12-16
この続きは、
やまもも書斎記 2019年12月16日
新潮日本古典集成『源氏物語』(四)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/12/16/9189826

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