『村上ラヂオ3』村上春樹・大橋歩2020-01-11

2020-01-11 當山日出夫(とうやまひでお)

村上ラヂオ3

村上春樹・大橋歩.『村上ラヂオ3-サラダ好きのライオン-』(新潮文庫).新潮社.2016(マガジンハウス.2012)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100168/

続きである。

やまもも書斎記 2019年12月7日
『村上ラヂオ2』村上春樹・大橋歩
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/12/07/9186095

やまもも書斎記 2019年12月13日
『ビギナーズ』レイモンド・カーヴァー/村上春樹(訳)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/12/13/9188650

久々の村上春樹である。本は、昨年のうちに読んでしまってあったのだが、そのまま積んであった。他の本のことなど書いているうちに時間がたってしまった。

この本も楽しいエッセイである。ただ、このシリーズ「村上ラヂオ」は、たぶん意図的に、あえて内容をはぐらかしたような、わざとに中身の無いような文章になっている。あるいは、特に大上段ににふりかぶって、何かを論じるということをしていない。これは、文章の発表の媒体が「アンアン」という雑誌であるせいだろうと思う。

村上春樹の長編小説、短編小説を読んできた目からすると、このような軽妙な……とりようによっては、軽薄なとも受けとめられかねない……文章を書くことのできる人であったのかと、村上春樹に対する認識をあたらにするところがある。おそらく村上春樹の文学世界の、ある部分を端的に表しているのが、このようなエッセイ類なのだろうと思う。(また、他には、主にアメリカ現代文学の翻訳者という側面も持っている。)

しかし、考えようによっては、このエッセイのように、わざと何の役にもたたないような文章を書くというのも、これはこれでかなり高等なテクニックを必要とすることでもある。村上春樹の文章のテクニシャンとしての側面を見ることができようか。

次の村上春樹は、翻訳小説にもどって『頼むから静かにしてくれ』である。

2020年1月10日記

追記 2020-01-25
この続きは、
やまもも書斎記 2020年1月25日
『頼むから静かにしてくれ Ⅰ』レイモンド・カーヴァー/村上春樹(訳)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/01/25/9206094