『源氏物語』岩波文庫(四)2020-04-13

2020-04-13 當山日出夫(とうやまひでお)

源氏物語(4)

柳井滋(他)(校注).『源氏物語(三)』(岩波文庫).岩波書店.2018
https://www.iwanami.co.jp/book/b374920.html

続きである。
やまもも書斎記 2020年4月6日
『源氏物語』岩波文庫(三)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/04/06/9232136

岩波文庫の編集でたまたまそうなっているのだろうが、この第四冊目には、玉鬘の物語をおさめる。遠い九州の地で生い育った玉鬘が、京にでてくるところからはじまって、最後は、髭黒の大将と一緒になるまでの一連の物語である。

いわゆる『源氏物語』の三段階成立論からすれば、これらの巻は、後から加筆、挿入された部分ということになる。そう思って読むせいもあるのだろうか、これらの玉鬘の物語は、これはこれとして、『源氏物語』の一部をなしながら、独立した印象を持つ。

読んで思うことを書いてみると、次の二点ほどである。

第一に、(これは前にも書いているが)やはり、京の都に上ってきた玉鬘が右近と遭遇するあたりの記述は、長谷寺の観音霊験譚とおぼしい。このような霊験譚については、後の宇治十帖でも感じるところである。

第二に、その玉鬘と光源氏との関係。光源氏は玉鬘に心をよせる。だが、これは、以前にその母親である夕顔……これは、なにがしの院でもののけにとりころされてしまうのであるが……と、その娘に、両方に関係をもつことになる。このあたり、おそらくは、『源氏物語』の当時にあっても、不倫めいた印象があったのだろう、はっきりと玉鬘と光源氏が関係をもつとは書いていない。しかし、ただならぬ関係になりつつある思いを、玉鬘の立場からも、また、光源氏のたちばからも、どうしようもできない心のうちを描いている。

ここは、いっそのこと、玉鬘と光源氏との関係があってもいいような気もしてしまうのだが、物語の叙述は、きわどいところで筆をとめている。

以上の二点が、この第四冊の玉鬘にまつわる巻を読んで感じるところなどである。

さらに書いてみるならば、この玉鬘の話として平行して出てくる、近江の君の話。これは、滑稽な話としてして読んでおけばいいのかもしれない。これは、玉鬘と近江の君と、対照的に描いてある。

このようなこと……どこかに昔関係した女が生んだ娘がいて、それを探し出してきて、ひきとってそだてる。それも、あわよくば、宮中に入内することもあり得るのかもしれない。このような昔物語が先行するものとして、きっとあったにちがいないと感じるところもある。

それから、よくわからないのが、髭黒の大将と、その北の方、子どもたち……女の子と男の子……である。これは、この当時の婚姻制度、男女の関係が、かなり今の感覚と違っていることを感じさせる。女の子は、母親の方についていくが、男の子はそうでもない。このあたり、平安貴族の婚姻の習俗がどのようなものであったか、興味深いところである。

また、これもすでに書いてみたことであるが……北の方が乱心して、香炉の灰を夫の髭黒の大将にあびせかけるシーン。これなど、『源氏物語』のなかにあって、非常に説話的な部分である。これも、おそらくは、もののけにとりつかれた妻の夫に対する行為として、流布していた話しがあってのことかもしれないと思ったりする。

さて、次は、第五冊目である。『若菜』の上・下になる。『源氏物語』で最も中核をなすところになる。このまま続けてよむことにしよう。

2020年2月8日記

追記 2020-04-20
この続きは、
やまもも書斎記 2020年4月20日
『源氏物語』岩波文庫(五)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/04/20/9237352

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