『暴虎の牙』柚月祐子 ― 2020-05-08
2020-05-08 當山日出夫(とうやまひでお)
柚月祐子.『暴虎の牙』.角川書店.2020
https://www.kadokawa.co.jp/product/321908000081/
シリーズの三冊目ということなので買って読んでみた。
やまもも書斎記 2017年1月20日
『孤狼の血』柚月裕子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/01/20/8327720
やまもも書斎記 2018年6月16日
『凶犬の眼』柚月裕子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/06/16/8895258
読んで思ったことを書けば……最初の『孤狼の血』が一番いい。これは警察小説の傑作であると思う。次が、続編の『凶犬の眼』になる。そして、この『暴虎の牙』である。はっきりいって、読んであまり面白いとは思わなかった。
この本が出たのが、今年の3月27日である(奥付)。出てすぐに買ったのを覚えている。途中まで読んで、ちょっと中断していた。世の中があまり落ち着かない状況であり、新学期からの学校の授業がどうなるかわかないということもあって、あまりゆっくりと本を読むという気になれなかった。すこしおいておいて、とぎれとぎれに読んだということもあるのかもしれない。結局、読み終わったのは、五月になってからということになった。
それでも、なんとか読み切ることができたのは、この小説がもともと新聞連載であるということもあってのことかとも思う。途中で時間をおいて、とぎれとぎれに読んでも、話しの筋を追っていけるように書いてある。といって、この小説は、波瀾万丈のストーリーで読ませる小説でもないし、また、じっくりとした描写の深さを読みこんでいくというタイプの作品でもない。
前の二作、『孤狼の血』『凶犬の眼』を読んでいるということを前提に書けば、大上(ガミさん)と日岡の二人の警察官の物語であり、広島を舞台にした、暴力団小説と言っていいだろう。
それにしても、暴力団の話しを書くのに、なぜ広島を舞台にしているのだろうか。広島方言で語られる台詞は、確かに、暴力団小説にふさわしいとも感じる。また、あるいは、広島という地方都市の規模が、ちょうど小説の舞台設定としては都合がいいということもあるのかもしれない。
小説のなかには、かなり残酷な暴力シーンも出てはくるのだが、その叙述はあっさりとしている。これは、作者が、女性ということがあってのことかもしれないと感じる。そんなにくどい描写ではない。
ともあれ、このシリーズの三冊目として、特に、大上の生活のことを書いた作品として、前作からつづけて読んでくると、興味のひかれるところがある。また、日岡の、駐在所勤務のその後の警察官としての仕事も描かれることになっている。
この作品は、単独で読むよりも、『孤狼の血』『凶犬の眼』を読んだうえで読むのが、より楽しめると感じるところがある。
2020年5月7日記
https://www.kadokawa.co.jp/product/321908000081/
シリーズの三冊目ということなので買って読んでみた。
やまもも書斎記 2017年1月20日
『孤狼の血』柚月裕子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/01/20/8327720
やまもも書斎記 2018年6月16日
『凶犬の眼』柚月裕子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/06/16/8895258
読んで思ったことを書けば……最初の『孤狼の血』が一番いい。これは警察小説の傑作であると思う。次が、続編の『凶犬の眼』になる。そして、この『暴虎の牙』である。はっきりいって、読んであまり面白いとは思わなかった。
この本が出たのが、今年の3月27日である(奥付)。出てすぐに買ったのを覚えている。途中まで読んで、ちょっと中断していた。世の中があまり落ち着かない状況であり、新学期からの学校の授業がどうなるかわかないということもあって、あまりゆっくりと本を読むという気になれなかった。すこしおいておいて、とぎれとぎれに読んだということもあるのかもしれない。結局、読み終わったのは、五月になってからということになった。
それでも、なんとか読み切ることができたのは、この小説がもともと新聞連載であるということもあってのことかとも思う。途中で時間をおいて、とぎれとぎれに読んでも、話しの筋を追っていけるように書いてある。といって、この小説は、波瀾万丈のストーリーで読ませる小説でもないし、また、じっくりとした描写の深さを読みこんでいくというタイプの作品でもない。
前の二作、『孤狼の血』『凶犬の眼』を読んでいるということを前提に書けば、大上(ガミさん)と日岡の二人の警察官の物語であり、広島を舞台にした、暴力団小説と言っていいだろう。
それにしても、暴力団の話しを書くのに、なぜ広島を舞台にしているのだろうか。広島方言で語られる台詞は、確かに、暴力団小説にふさわしいとも感じる。また、あるいは、広島という地方都市の規模が、ちょうど小説の舞台設定としては都合がいいということもあるのかもしれない。
小説のなかには、かなり残酷な暴力シーンも出てはくるのだが、その叙述はあっさりとしている。これは、作者が、女性ということがあってのことかもしれないと感じる。そんなにくどい描写ではない。
ともあれ、このシリーズの三冊目として、特に、大上の生活のことを書いた作品として、前作からつづけて読んでくると、興味のひかれるところがある。また、日岡の、駐在所勤務のその後の警察官としての仕事も描かれることになっている。
この作品は、単独で読むよりも、『孤狼の血』『凶犬の眼』を読んだうえで読むのが、より楽しめると感じるところがある。
2020年5月7日記
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