『戦争と平和』(五)トルストイ/岩波文庫2020-05-18

2020-05-18 當山日出夫(とうやまひでお)

戦争と平和(5)

トルストイ.藤沼貴(訳).『戦争と平和』(五)(岩波文庫).岩波書店.2006
https://www.iwanami.co.jp/book/b248230.html

続きである。
やまもも書斎記 2020年5月15日
『戦争と平和』(四)トルストイ/岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/05/15/9246826

第五巻まで読んできた。歴史上の出来事としては、フランス軍はモスクワに迫る。ロシア軍はモスクワを放棄して逃げ去る。そして、冬が来て、今度は、フランス軍がモスクワから撤退ということになる。

この大きな歴史の流れのなかで、この小説の登場人物……アンドレイ、ピエール、ナターシャ、マリアなど……にそれぞれ、劇的なドラマが待ち受けている。

読んで思ったことなど書いてみると、次の二点になるだろうか。

第一には、プラトンのこと。フランス軍に捕らえられたピエールが出会う農民である。

この『戦争と平和』は、基本的に貴族が登場人物である。軍人として登場する人物も、指揮官クラス以上である。そのせいか、この小説を読んで、今一つ、今日でいう「国民」とか「市民」ということばいっている概念と、どうもしっくりこない。

これは、一九世紀の初頭のロシア、あるいは、ヨーロッパの話しだから、近代的な市民というものが成立する以前の話し、そう思って読めばいいのかもしれない。そう思ってはみるものの、現代の「国民国家」を基盤とした「市民社会」というものに慣れた視点からは、どうもよくわからないところがある。

その中にあって、プラトンという農民は特異な印象がある。おそらく、この人物には、作者(トルストイ)の、ある種の理想が投影されているのだろうことは、感じとれる。解説(コラム)によると、ここには、東洋の老荘思想の反映があるとのことである。

第二には、戦争のこと。

どうも西洋史、また、ロシアの近代史にうとい人間なので、大きな歴史の流れがわかりにくい。いや、おおまかな歴史……戦争においてナポレオンは結局は敗退することになる……ぐらいは分かっているのだが、その戦争の歴史の細部にわたっては、皆目知識がない。

ここを補うものとして、この岩波文庫の訳には随所にコラムが挿入してあり、当時のロシアの風俗や生活のことなどについて、解説がある。これはありがたいと思って読んできた。

読んでいて、歴史的な叙述の部分については、どうもよくわからないというのが正直なところではある。しかし、小説の中の登場人物であるピエールなどのところになると、ふと読みふけってしまうことにもなる。これが、もし、この小説の歴史的背景について十分な予備知識を持っているのならば、歴史的な叙述の部分についても、楽しめるのだろうとは思う。

以上の二点ぐらいを思ったこととして書いてみた。

それから、やはりこの第五冊目においても、ナターシャは魅力的である。清楚で情熱的な、おそらく作者は、理想のロシア女性として描いている。

残りは、最後の六冊目である。続けて読むことにしたいと思う。

2020年5月13日記

追記 2020-05-21
この続きは、
やまもも書斎記 2020年5月21日
『戦争と平和』(六)トルストイ/岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/05/21/9248933

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