『源氏物語』(13)椎本・総角2020-08-04

2020-08-04 當山日出夫(とうやまひでお)

源氏物語(13)

阿部秋生・秋山虔・今井源衛・鈴木日出男(校注・訳).『源氏物語』(13)椎本・総角.1998
https://www.shogakukan.co.jp/books/09362093

続きである。
やまもも書斎記 2020年8月3日
『源氏物語』(12)匂兵部卿・紅梅・竹河・橋姫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/08/03/9274836

第一三冊目である。「椎本」「総角」をおさめる。

「宇治十帖」を読んでいる。「桐壺」から順番に読んできて、「宇治十帖」になると、これは、色好みの物語ではない、と強く感じるところがある。むしろ、近代的な、恋愛心理小説に近いと言っていいかもしれない。

ここまでの主な登場人物は、薫、匂宮、大君、中君、である。この四人の、それぞれの思惑のいきちがい、微妙な心理の交錯が、宇治の里を舞台にしてくりひろげられる。

これまで読んできた印象としては、「若菜」(上・下)あたりから、『源氏物語』は大きく展開する。光源氏という当代随一の貴公子を軸とした、色好みの物語であったものが、人間の心理のうち、そのゆれうごき、すれちがい、といったことを綿密に見つめる筆致に変わっていく。特にそれを強く感じるのが、「夕霧」の巻ぐらいからである。

勝手な妄想をするならばであるが……「若菜」(上・下)を書いたところで、作者は、色好みの物語を書くことを、超越してしまったとも解釈できようか。といって、「宇治十帖」別作者説をとなえようとは思わない。ただ、『源氏物語』を順番に読みながら、それを書いている作者の、人間を見る目の深化というものを感じてしまうのである。

それから、「総角」における、大君の死の描写は印象的である。『源氏物語』には多くの人の死が描かれるが、そのなかでも特に印象に残る場面である。

大君が亡くなり、次は浮舟の登場となる。続けて読むことにしよう。

2020年7月1日記

追記 2020-08-06
この続きは、
やまもも書斎記 2020年8月6日
『源氏物語』(14)早蕨・宿木
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/08/06/9275816