映画『この世界の片隅に』2020-08-13

2020-08-13 當山日出夫(とうやまひでお)

NHKで9日の日に放送であった。録画しておいて、翌日に見た。NHKは以前にも、この映画を放送している。再度見てみて思うことがいろいろとある。最初見たときには、気付かなかったいくつかのシーンが、印象的であったりもする。

原作の漫画も読んでいるし、また、TBSでドラマ化したのも見ている。漫画(原作)、アニメ、ドラマとそれぞれに、表現の違いはあるというものの、基本的に共通して描いているのは、日常というものの愛おしさであろうか。

時代設定は、主に、太平洋戦争、いや、すずの立場にたっていえば、大東亜戦争と言った方がいいかもしれない、の末期の日々である。戦局は不利な状況下にありながら、いや、むしろそのような状況下だからこそ、日々の日常生活が意味のあるものになってくる。

今回、アニメ版を見て一番印象にのこったのは、玉音放送のシーンである。昭和二〇年八月一五日、玉音放送でもって、日本国民は、敗戦ということを知ったことになる。(これはこれで、まったく問題ないとは思わない。正式に降伏文書に調印したのは、九月二日である。これは、いわゆる、八月一五日の神話の再生産といえなくもないのだが。)ともあれ、ラジオの放送が終わっても、それで、すずたちの日常が変わることはない。同じように生活が続いていく。同じように日常が続いていくからこそ、戦時下の生活の理不尽さが強く印象にのこるということかもしれない。

ただ、やはり惜しいと思うのは、リンのことが大幅に省略した編集になっていること。リンという女性……妓楼につとめている……との交流があってこそ、この作品は、より深みが増すと思う。

原作の漫画も、買って読んでしまいこんである。取り出してきて、さらに読みかえしてみようかと思う。

2020年8月12日記