『林芙美子』ちくま日本文学2020-08-31

2020-08-31 當山日出夫(とうやまひでお)

林芙美子

林芙美子.『林芙美子』(ちくま日本文学).筑摩書房.2008
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480425201/

少し前に『放浪記』を読んでいる。

やまもも書斎記 2020年3月12日
『放浪記』林芙美子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/03/12/9223294

続けて、林芙美子の作品を読んでみたいと思いながら、今になった。ちくま日本文学のシリーズの一冊で、「林芙美子」が出ているので読んでみることにした。

林芙美子の小説を読んで感じるとことは、次の二点になる。

第一は、リアリズムの視点。

林芙美子の小説は、どちらかといえば、社会の下層に位置する人びとを描いている。その生活感情を、実に繊細な筆致でありながら、リアリズムの手法で綿密に描いている。この意味では、いわゆる自然主義文学の系譜につらなるといってもいいのかもしれない。

そして、描かれている人物としては、女性がたくましい。生きるちからが十分にみなぎっている。それにくらべると、出てくる男性が、どうにもだらしなく感じてしまう。

第二は、詩情。

リアリズムの小説でありながら、林芙美子は詩人である。その行間にただよう、そこはかとない叙情性を感じながら読むことになる。この詩情が、社会の下層にいる女性の生活感情と一緒になって、なんともいえない雰囲気をかもしだしている。

以上の二点が、林芙美子の小説を読んで感じるところである。

収録されている作品のなかでは、「風琴と魚の町」がいい。文学史的にいえば、林芙美子の代表作の一つということになる。

さて、川本三郎の『林芙美子の昭和』を読んだのは、いつのことだったか。さがせばどこかにまだあるはずの本である。本の整理かたがたさがしだして、読みかえしてみたくなっている。

2020年8月26日記

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