『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭(訳)2020-09-04

2020-09-04 當山日出夫(とうやまひでお)

メインテーマは殺人

アンソニー・ホロヴィッツ.山田蘭(訳).『メインテーマは殺人』(創元推理文庫).東京創元社.2019
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488265090

『カササギ殺人事件』のときは、出たときに買って読んだのであった。

やまもも書斎記 2018年10月12日
『カササギ殺人事件』アンソニー・ホロヴィッツ
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/10/12/8971547

『メインテーマは殺人』』であるが、出た時に買ってあったのだが、積んであった。秋になると、そろそろ出版各社が、年末のミステリベストのシーズンにむけて、これぞ本命という作品を出してくる。アンソニー・ホロヴィッツも、新しい作品が出るらしい。ということで、未読であったこの本をともかくも読んでおくことにした。

この作品も、『カササギ殺人事件』についで、各種のミステリベストの一位になっている。世評の高い作品であるとは思っていた。ただ、なんとなく、買ったまま読みそびれてしまっていた。

読んでみて、なるほど、ミステリベストの一位をとる作品だけのことはあると感じる。

興味深いの、やはりその叙述の視点の設定にある。ミステリ作家でもある「アンソニー・ホロヴィッツ」のもとに、元刑事のホーソーンがおとづれる。自分がこれから捜査することになる殺人事件のことを本にしないかともちかけられ、筆者はそれをひきうけることになる。

事件は、奇妙な設定のもとにおこる。ある資産家の老婦人が、葬儀社を訪問して自分の葬儀のことについて相談する。そして、その日に、殺されてしまう。これは、因果関係のあることなのだろうか、それとも、たまたまの偶然か。

ただ、最終的に謎が解明されたときには、この物語の発端こそが、このミステリの謎の本質にせまるものであることに気付くことになる。読み終わって、作品の冒頭部分を読みかえしてしまった。

「ワトソン」役の作者は、ただの叙述者の立場にとどまらないところも面白い。最後には、謎の解明に一役かうことになっている。このあたりの語り口が見事である。

現代英国における、きわめて良質なミステリといってよいであろう。

2020年8月31日記

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