『フランス革命についての省察』エドマンド・バーク/二木麻里(訳)2020-09-24

2020-09-24 當山日出夫(とうやまひでお)

フランス革命についての省察

エドマンド・バーク.二木麻里(訳).『フランス革命についての省察』(光文社古典新訳文庫).光文社.2020
https://www.kotensinyaku.jp/books/book329/

この本を読んでいるとき、日本の政治はというと……八年にわたった安倍政権がおわることになり、次の自民党総裁をえらぶことになった。そして、その結果は、菅義偉が決まった。このような政治状況のなかで、この本を読んだことになる。

率直な感想を言えば……日本の政治家のなんとだらしないことか、という思いである。

ともあれ、この本は、フランス革命に際して、英国から見てそれをどう思うか、考察を加えたものであり、英国保守思想を体系化した書物として、古典的な位置をしめる本である。ひととおり、このようなことは知っていたが、読むのは、これが初めてになる。(たしか、中央公論社の『世界の名著』のなかにはいっていたかと思うが、これはしまい込んだままになっている。)

保守思想とは何かということについては、今更のべるほどのこともないだろう。以前に、少しだけ書いたことがある。

やまもも書斎記 2016年7月1日
宇野重規『保守主義とは何か』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/07/01/8122012

ただ、今回、『フランス革命についての省察』を読んで思うことを記しておくならば、次のことがある。それは、バークがこの本を書いたとき、英国は、立憲君主制を確立しており、まがりなりにも、民主的な制度がととのった状況にあったということである。そのような英国から見て、フランス革命の行きすぎた点、不十分な点、問題点などを、冷静に観察している。そのような批判ができるというのも、その時点に英国における政治制度の熟成ということを、考えておくべきであろう。

この本を読みながら、あえて付箋をつけることはせずに読んだのだが、一箇所だけ注目しておきたいところを引用しておく。

「社会の構成メンバーの利害も多様になれば、さまざまな秩序とさまざまな見方ができて、その数が多いほど社会一般の自由にとっては保障になるのです。」(p.77)

今、社会の多様性ということが、各方面から言われている。このとき、多様な意見を尊重し、耳を傾けること……これこそ、保守主義の最も重視することである。すくなくとも、真性の保守主義者であろうとするならば、このことに十分に配慮しなければならない。

保守を自認するする人、組織、政党などは多いかもしれないが、そこに、多様な意見の尊重という観点が、どれほどあるだろうか。それを欠くような考え方については、私は、保守とは言いたくない。

この本は、保守主義の古典的著作ではあるが、むしろ、リベラルといわれる立場にとっても、非常に有意義なものとなっていると感じる。どのような政治的立場をとるにせよ、熟読する価値のある本であることはまちがいない。

2020年9月16日記