『消しゴム』ロブ=グリエ/中条省平(訳)2020-09-26

2020-09-26 當山日出夫(とうやまひでお)

消しゴム

ロブ=グリエ.中条省平(訳).『消しゴム』(光文社古典新訳文庫).光文社.2013
https://www.kotensinyaku.jp/books/book173/

はっきりいってわけのわからない作品である。だが、読み終わってなんとなくわかったような気にもなる。

この作品、『文学こそ最高の教養である』で紹介されているので読んでみたことになる。そこで、映画『去年マリエンバードで』を作ったのは、実質的にロブ=グリエであるとあった。この映画を見たのは、学生のときだったと覚えている。見て、いったいこの映画は何なんだ、と思ったものである。わけがわからない。しかし、今にいたるまで強烈な印象を残している映画である。

『消しゴム』を読んで思ったことは、次の二つ。

第一に、どうしてもカフカを思ってしまうこと。『文学こそ……』では、カフカとの直接的な関係性は否定されている。しかし、その描く世界は、カフカに通じるものがある。読みながら、どうしようもない不条理の前にたたずまざるをえない人間というもの、カフカ的な何かとしかいいようがないが、これを感じた。

第二に、やはり『去年マリエンバードで』を思ってしまうこと。このことを事前に知っていたから余計にそう思うのだとは思うが、場面の切り替わり、主体となる作中人物の交錯、といったあたりに、どうしても『去年……』を連想してしまう。とどのつまり結果がどうであるかはどうでもよくて、それにいたる様々な視点と時制の交錯する世界なんだろうと、納得することになる。

以上の二つが、『消しゴム』を読んで思ったことである。

私は、これまで、いわゆる「ヌーヴォー・ロマン」の類は、あまり読まずにきている。これをきっかけに読んでおきたいような、いや、もうこの領域には踏み込みたくないような、微妙な感覚になる。だが、この作品も、『文学こそ……』をきっかけにしなければ、手にすることなく過ぎてしまった作品である。このような文学もあり得るということを知り得ただけでも、貴重な読書の時間であったと思う。

2020年9月15日記