『お伽草紙』太宰治/新潮文庫2020-11-19

2020-11-19 當山日出夫(とうやまひでお)

お伽草紙

太宰治.『お伽草紙』(新潮文庫).新潮社.1972(2009.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100607/

続きである。
やまもも書斎記 2020年11月16日
『惜別』太宰治/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/11/16/9317040

新潮文庫版で太宰治を読んでいる。『お伽草紙』には、

「盲人独笑」
「清貧譚」
「新釈諸国噺」
「竹青」
「お伽草紙」

を収録する。

たしか、記憶では、「お伽草紙」のなかの何かの作品が、学校の教科書にのっていたように覚えているのだが、しかし定かではない。が、この「お伽草紙」は、再読になる。若いとき、高校生のころだったか、大学生になってからだったか、読んだのは覚えている。それ以来だから、四〇年以上前のことになる。

文学史的には、太宰治の中期、戦争中の作品で、日本や中国の昔話などに題材をとった作品群ということになる。「新釈諸国噺」は、西鶴の作品を典拠としたものである。

久々に読んで見て、実に面白い。太宰はこんな面白い小説を書く作家だったのかと、認識をあらたにしたといってもいいだろう。典拠があるというのは、確かに創造にとっては制約かもしれない。だが、太宰は、むしろ制約があってこそ、そこに近現代の人間の目をもちこんで、自在に文学を展開している。ここにあるのは、まぎれもなく太宰の文学である。

一般に太宰は、無頼派などといわれたりするのだが、ここに収められた作品は、あまりそのような印象はない。むしろ、語り口の面白さ、小説としての構築の妙ということを感じる。

この本を読んで、ふと西鶴の作品を読みなおしてみたくなった。西鶴も、読んだのは、大学で国文学、国語学を勉強していたころにことになる。それ以来、とおざかっている。太宰を読んだら、日本の近世文学の作品など、読みなおしてみたいと思う。

2020年11月13日記

追記 2020-11-20
この続きは、
やまもも書斎記 2020年11月20日
『走れメロス』太宰治/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/11/20/9318366