『眠る盃』向田邦子 ― 2021-01-09
2021-01-09 當山日出夫(とうやまひでお)
向田邦子.『眠る盃』(講談社文庫).講談社.2016(講談社.1979 講談社文庫.1982)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000212266
続きである。
やまもも書斎記 2021年1月8日
『隣りの女』向田邦子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/01/08/9335501
向田邦子の二冊目のエッセイ集ということになる。この本は、昔、若いときに読んだ記憶がある。書誌を書いてみて、講談社文庫版の古いのだったかと思う。
「モジリアーニ」の名前を見ることがあると、向田邦子の文章のことを思い出す。はて、「モジリアーニ」であっているのか、ひょっとして「モリジアーニ」であったのかな……と、思いこんでしまうのである。向田邦子の文章を読むまでは、正しく記憶していたはずなのだが、このエッセイのせいで、私の記憶が混乱することになっている。
「勝負服」ということばも、向田邦子のエッセイを読んで覚えたことばである。
向田邦子の書いたものを読みなおしていると、やはり若いときにその文章を読んだころのことを思い出す。私も若かったし、日本は、高度経済成長が終わり、だが、まだ社会のなかには、昭和の戦前、戦後の余韻がかすかに残っていた時代である。無論、その後のバブル経済のことは、微塵も感じられない、今から思えば、のどかな時代であったかもしれない。
そののどかさを残した昭和の風景が、向田邦子のエッセイからはたちのぼってくる。
ところで、向田邦子のエッセイの魅力はいろいろと語ることができるだろうが、その一つにユーモアがあると思っている。ゲラゲラと笑い転げるおかしさではなく、思わずうつむいてクスッと笑ってしまうような、おもしろさである。そして、そのユーモアには、かすかに、はにかみとでもいうべきものがよりそっている。
(今から思えば)時代の先端を行くような自立した女性の生き方をしていながら、どことなく、古風な昭和戦前の生活感覚を感じさせる、向田邦子の文章には、どこかしらはにかみといっていいようなものを感じてしまうのである。これが、おそらくは、向田邦子の文章が今にいたるまで読み継がれている理由の一つかと思う。
読んでみた講談社文庫版にしても、古い文庫版を改版して、あたらしく活字を大きくしたものになっている。新装版である。文春文庫版でも、同様のあつかいになっている。
2021年1月5日記
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000212266
続きである。
やまもも書斎記 2021年1月8日
『隣りの女』向田邦子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/01/08/9335501
向田邦子の二冊目のエッセイ集ということになる。この本は、昔、若いときに読んだ記憶がある。書誌を書いてみて、講談社文庫版の古いのだったかと思う。
「モジリアーニ」の名前を見ることがあると、向田邦子の文章のことを思い出す。はて、「モジリアーニ」であっているのか、ひょっとして「モリジアーニ」であったのかな……と、思いこんでしまうのである。向田邦子の文章を読むまでは、正しく記憶していたはずなのだが、このエッセイのせいで、私の記憶が混乱することになっている。
「勝負服」ということばも、向田邦子のエッセイを読んで覚えたことばである。
向田邦子の書いたものを読みなおしていると、やはり若いときにその文章を読んだころのことを思い出す。私も若かったし、日本は、高度経済成長が終わり、だが、まだ社会のなかには、昭和の戦前、戦後の余韻がかすかに残っていた時代である。無論、その後のバブル経済のことは、微塵も感じられない、今から思えば、のどかな時代であったかもしれない。
そののどかさを残した昭和の風景が、向田邦子のエッセイからはたちのぼってくる。
ところで、向田邦子のエッセイの魅力はいろいろと語ることができるだろうが、その一つにユーモアがあると思っている。ゲラゲラと笑い転げるおかしさではなく、思わずうつむいてクスッと笑ってしまうような、おもしろさである。そして、そのユーモアには、かすかに、はにかみとでもいうべきものがよりそっている。
(今から思えば)時代の先端を行くような自立した女性の生き方をしていながら、どことなく、古風な昭和戦前の生活感覚を感じさせる、向田邦子の文章には、どこかしらはにかみといっていいようなものを感じてしまうのである。これが、おそらくは、向田邦子の文章が今にいたるまで読み継がれている理由の一つかと思う。
読んでみた講談社文庫版にしても、古い文庫版を改版して、あたらしく活字を大きくしたものになっている。新装版である。文春文庫版でも、同様のあつかいになっている。
2021年1月5日記
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