『まちあわせ』柳美里2021-01-23

2021-01-23 當山日出夫(とうやまひでお)

まちあわせ

柳美里.『まちあわせ』(河出文庫).河出書房新社.2016(河出書房新社.2012 『自殺の国』改題)
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309414935/

柳美里の本を読んでいる。

『JR上野駅公園口』『飼う人』と読んで、これらがよかったのでさかのぼって文庫版、古書などで手にはいるものを、ぼちぼちと読んでいこうかと思っている。そろそろ、学校の授業も終わりである。居職の生活をつづけるなかで、これまで買いためてある本を整理して読みながら、柳美里を手にしている。

この作品については、評価が難しいかなと思う。だが、これもまた柳美里の描いている作品世界の一つなのだということは理解できる。

その描くところは、現代という時代における人びとのあり方の一面であることは確かである。それが成功しているかどうか、あるいは、その登場人物に共感して読めるかどうかは、また別の問題ではある。だが、すくなくとも現代社会に生きる人びとの一つの姿をそこに見ることはできるだろう。

しかし、事実は小説よりも奇なりというが……この小説の書かれた時代の様相を、今の時代……インターネットが生活の隅々にまではいりこみ、SNSの情報洪水とでもいうべきなかにいると……この小説の描こうとしたことが、すでに過去の出来事のように思えてならない。

ともあれ、柳美里がこんな小説を書いていた作家であったのか、という意味で非常に興味深かったというのが、正直な感想である。

この小説の描いたこと……自殺サイトであり、また、崩壊した家族の物語……たぶん、柳美里にとって、家族とは何か、家族の一員として生きることはどういうことなのか、このことについての問いかけが根底にあるのだろうということは理解できるように思う。柳美里は、その好き嫌いは別にしても、現代という時代を描いている作家の一人であることは確かなことである。

ところで、柳美里で本を検索して見ていると、この作品は、『JR品川駅高輪口』というタイトルで、再び改題して刊行になるらしい。これは、河出書房新社もどうかと思う。ほとんど詐欺に近いように思ってしまうのだが。

2021年1月22日記

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