『推し、燃ゆ』宇佐見りん2021-02-19

2021年2月19日 當山日出夫(とうやまひでお)

推し、燃ゆ

宇佐見りん.『推し、燃ゆ』.河出書房新社.2020
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309029160/

芥川賞の作品である。話題の本ということで読んでみることにした。内容については、他にいっぱい書かれているだろうから、特に記さない。ただ、読んで感じたことを二点ばかり書いてみる。

第一には、私には、この作品がわからないことである。

わからない……ということでもないが、今一つ、作品の登場人物の世界に入り込めないもどかしを感じる。これは、私が、もう年をとってしまったせいかとも思う。若い人の感性で読めば、この作品の世界に共感するところが多々あるのだろうと思う。だからこそ、芥川賞をとり、いろいろと話題になっている。

第二には、しかし、この作者の才能は確かなものだと思う。

その作品世界に、共感できるとことが少ないとはいえ、一つの文学世界を構築する技量としては、確かなものを感じる。これはこれで、一つの確固たる作品世界を作りあげている。芥川賞が、その作品の完成度もさることながら、作家の可能性への賞であるという側面があるとするならば、まさに、芥川賞にふさわしい出来映えの作品であると感じる。

以上の、相反する二つのことが、この作品を読んで感じるところである。

何が文学なのか……これは、時代とともに変わるところもある。(無論、時代を超えて、普遍的な文学というものを考えることもできるが。)これは、新しい才能、新しい文学なのだろうと思う。自分自身の文学に対する感性を確認する意味でも、この作品は読んでみる価値があるといっていいだろう。なにも芥川賞の作品であるからといって、わかる必要はないと思うのである。

2021年2月6日記

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