『心淋し川』西條奈加2021-02-20

2021年2月20日 當山日出夫(とうやまひでお)

心淋し川

西條奈加.『心淋し川』.集英社.2020
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-771727-3
https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/urasabishigawa/

直木賞の作品である。読んでおきたいと思って手にした。西條奈加の作品を読むのははじめてになる。

読んで、なるほど、この作品が直木賞をとるのはもっともなことだな、と納得した。傑作といっていいだろう。エンタテイメント時代小説として、王道を行くつくりになっている。

連作短篇集という形式をとっている。どの作品も、それぞれに独立しているが、共通することとして、江戸の某所にある長屋の住人にまつわる物語ということになる。そのどの話しもいい。読んで、どことなく救われるような、最後に小さな幸福を予感させるような作品のあつまりになっている。

その一方で、最終の作品になって、それまでの連作短篇をうけて、大きく物語が展開する。そこまでのことを伏線として、一つの物語になっている。ここにもっていくストーリーの展開が、実に巧いと感じさせる。

なお、この作品のタイトル『心淋し川』は、「うらさびしがわ」と読む。全編を読み終わってから、タイトルを確認すると、このタイトルの付け方も絶妙であると思わせるところがある。

2021年2月8日記

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