『ブラフマンの埋葬』小川洋子2021-03-12

2021-03-12 當山日出夫(とうやまひでお)

ブラフマンの埋葬

小川洋子.『ブラフマンの埋葬』(講談社文庫).講談社.2007(講談社.2004)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000204411

続きである。
やまもも書斎記 2021年3月11日
『まぶた』小川洋子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/03/11/9355914

小川洋子ならではの透明感あふれる作品である。

舞台は、どこかの架空の村、というよりもその郊外のある場所。〈創作者の家〉。そこで管理人の仕事をしている僕。ふとあらわれた、小さな不思議な生きもの……僕はそれにブラフマンと名前をつける。そして、僕とブラフマンと、〈創作者の家〉の人びと、村の人びととの、生活がはじまる。

抒情的というのとも違う、神秘的というのとも違う、ファンタジーというのでもない、なんともいえない雰囲気のただよう作品である。淡々とした記述のなかに、僕とブラフマンとのきずなが描かれる。生きものを見るいとおしさがつたわってくる。

大きめの活字でゆったりと組んである本なので、文庫本といってもいっきに読めてしまう。タイトルに「埋葬」とあるから分かることなのだが、最後にブラフマンとの別れがある。別にこのような終わり方でなくてもいいのにという気がしないでもないが、ブラフマンとの別離が、印象的な読後感として残る。

ある種の心のあたたかさに触れるような感じのする作品である。

2021年3月3日記

追記 2021年3月13日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年3月13日
『ミーナの行進』小川洋子
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/03/13/9356547

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