『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子2021-03-22

2021年3月22日 當山日出夫(とうやまひでお)

猫を抱いて象と泳ぐ

小川洋子.『猫を抱いて象と泳ぐ』(文春文庫).文藝春秋.2011(文藝春秋.2009)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167557034

続きである。
やまもも書斎記 2021年3月19日
『妊娠カレンダー』小川洋子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/03/19/9358420

チェスをあつかった小説である。

が、あいにくと、私はチェスを知らない。見たことはあると思うのだが、実際にプレーした経験はない。ただ、知識としてそのゲームがあるということを知っているだけである。

しかし、チェスを知らなくても、この小説は十分に楽しめる。まさに、小川洋子の文学世界がここには展開されている。

チェスの才能にめぐまれた、ある少年の物語である。その少年は、一一才で成長がとまってしまう。チェスの才能はあるのだが、普通にプレーすることをしない。チェスのテーブルの下にもぐって、人形を操作してプレーする。こう書いてしまうと、なんとも奇妙な物語という感じなのだが、読んでいくと、これが実にすんなりと読めてしまう。小川洋子ならではのストーリーテラーの物語である。

それにしても、小川洋子の作品の登場人物は、寡黙な人間が多い。主人公の少年も多くを語ることがない。ただ、チェスのプレーと棋譜に、物語を読みとっている。棋譜のなかに、対戦する相手のこころが語られる。

現代日本において、チェスを題材にあつかった、希有な小説といっていいのだろうと思う。

2021年3月11日記

追記 2021-03-25
この続きは、
やまもも書斎記 2021年3月25日
『貴婦人Aの蘇生』小川洋子
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/03/25/9360319

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