『地の果ての獄』山田風太郎2021-04-15

2021-04-15 當山日出夫(とうやまひでお)

地の果ての獄

山田風太郎.『地の果ての獄』(山田風太郎明治小説全集第三巻).筑摩書房.1997(文藝春秋.1977)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480710239/

続きである。
やまもも書斎記 2021年4月8日
『幻燈辻馬車』山田風太郎
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/04/08/9365078

山田風太郎の明治小説を読んでいたのは、学生のときだった。そのころは、その奇想天外な着想、そして、歴史上の著名人がふと現れてくる面白さ……このようなところにひかれて読んでいた。若いときに、文庫本、単行本で読める範囲の作品は読んでいたかと思う。

この作品も再読になる。原胤昭という人物のことは、山田風太郎の小説で知ったことになる。この人物は、先に読んだ『幻燈辻馬車』にも出てくる。

舞台は北海道の刑務所……樺戸集治監……である。そこに勤務することになった有馬四郎助が、主人公である。虚実とりまぜていろんな登場人物が出てくる。それには、刑務所ならではのこととして、犯罪者もいれば、得たいの知れない奇妙な医者もいる。

北海道を舞台にして、破天荒な物語が進行するのであるが、その底には、歴史についての非常に冷静な目があると感じる。明治の文明開化の世の中にあって、その時代の流れに乗りおくれたもの、反逆するもの、取りのこされたもの……歴史の敗残者といっていいだろう、そのような人びとの視点から、明治という時代をみればどうなのか、非常にするどい史観がそこにはあるように感じる。

場面が北海道の刑務所に限定されるといっても、登場人物は、加波山事件、秩父事件、西南戦争などのさまざまなできごとの関係者が、るつぼのようにうずまいている。そこには明治の歴史の暗黒面がある。

と同時に、波瀾万丈のストーリーの展開する、痛快なエンタテイメント活劇にもなっている。このあたりが、山田風太郎の明治伝奇小説の魅力なのであろう。

ここまで山田風太郎を読んでくると、この勢いで、山田風太郎明治小説全集の全作を読んでおきたくなった。筑摩の「全集」は古書で買えるものもある。また、それ以外でも、まだ、ちくま文庫版も刊行になっているようだ。これから、順次読んでいくことにしたい。

COVID-19のこともあって、居職の生活である。このようなときこそ、「歴史」そして「運命」というものを自分なりに考えてみたい、そんな気もしている。

2021年4月8日記

追記 2021-04-22
この続きは、
やまもも書斎記 2021年4月22日
『明治断頭台』山田風太郎
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/04/22/9369597

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