『明治十手架』山田風太郎2021-05-31

2021-05-31 當山日出夫(とうやまひでお)

明治十手架(上)

山田風太郎.『明治十手架』上・下(ちくま文庫 山田風太郎明治小説全集13・14).筑摩書房.1997(読売新聞社.1988)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480033536/

続きである。
やまもも書斎記 2021年5月27日
『明治バベルの塔』山田風太郎
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/05/27/9381702

この本は、単行本が出たときに買って読んだのを覚えている。明治のはじめ、石川島の監獄の話しである。

山風太郎の明治伝奇小説では、長編としては、この作品で終わりということになるようだ。昔、読んだときは、そのようなことは気にすることなく、ただ面白い小説と思って読んだ。

主な登場人物は、原胤昭。この人物、「地の果ての獄」でも登場している。刑務所の教誨師である。この小説では、江戸時代の元・与力ということで登場する。他に登場する有名人としては、岸田吟香であったり、ヘボンであったりする。

岸田吟香というと、国語学や日本語史の勉強をすれば目にする名前である。『和英語林集成』(=和英辞典)の編集で有名である。他には、「呉淞日記」(「うーすんにっき」と読む)という資料を残している。言文一致体の、近代文体成立を考えるうえでも重要な価値がある。(ここで、ねんのためと思って、ジャパンナレッジで検索していくつかの項目を読んでみた。日本で最初の盲学校の設立にもかかわっている。その他、新聞など、明治の時代に多方面に活躍した人物である。画家の岸田劉生は、その子供である。)

ところで、「明治十手架」であるが、山田風太郎の明治伝奇小説を、初期の「警視庁草紙」から再読してきてみて、あまり歴史への批判的まなざしは感じなくなっている。それよりも、明治のはじめという時代設定で、史実に即しながらも、荒唐無稽な、しかし、面白い小説を書こうとしたのだと感じるところがある。

とはいっても、山田風太郎の作品である。歴史のなかで、その時代の波に乗れなかった人びとへのまなざしということを、強く感じる作品になっている。そして、起承転結の構想がたくみである。

2021年5月22日記

追記 2021年6月3日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年6月3日
「黄色い下宿人」山田風太郎
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/06/03/9384047