映像の世紀プレミアム(4)「英雄たちの栄光と悲劇」2021-09-02

2021-09-02 當山日出夫(とうやまひでお)

映像の世紀プレミアム(4) 英雄たちの栄光と悲劇

これも月曜日の放送を録画しておいて、翌日の朝に見た。この回も見たかと思うのだが、それはそれとして、再放送の続きで見ている。

この回でとりあげていたのは「英雄」。「映像の世紀」は、あるい意味で「英雄」の世紀であったのかもしれない。映像というメディアによって「英雄」がつくられていく。それを作るのは、メディアであると同時に、世の中の多くの人びとである。

最初に登場していたリンドバーグなどは、まさにメディアの作りあげた「英雄」だろう。そして、その生涯も、また興味深い。ヒトラーのドイツに加担することになる人生も、また、人びとによって作りあげられた「英雄」ならではのことかとも思う。

いろいろと興味深いシーンがあったが、一つだけあげるとするならば、幻となったケネディ大統領のスピーチ。その暗殺という事件のため、日米の衛星中継の最初のニュースが、まさにその暗殺事件の報道になってしまったことは、知られていることであろう。このとき、何事もなければ、アメリカから放送されるはずだった、ケネディのスピーチ映像が、印象に残る。

そして、もう一つ印象的だったのが、ケネディとルメイの会話。核戦争につきすすもうとするルメイに対して、ケネディは躊躇の立場である。(結果的には、このときのケネディの判断が良かったことになるのだが。)

このような番組の場合、何が映っているかということも気になるが、同時に何を映さないかということも気になる。ケネディは、キューバ危機を救った「英雄」としてあつかってあったようだが、同時に、ベトナム戦争の泥沼化についても、責任なしとはしないであろう。このことにまったく触れないのは、すこしどうかなという気がした。

そして、見終わって感じることの一つとして、女性が登場していないことがある。「英雄」をテーマに編集して、なぜ女性が出てこないのだろうか。放送は、二〇一七年。たしかに、女性については、別に特集してとりあげているのだから、ということもあるのかもしれない。しかし、「英雄」をとりあげるなかで、女性が出てこないというのも、ちょっと気にかかる。

個人的な思いでとして覚えているのは、力道山。その生きていた時代、テレビで見たのを覚えている。たしかに、今から思い出してみるならば、力道山は、日本の戦後高度成長経済の時代の「英雄」であった。(この力道山の生涯を追ってみるならば、これはこれでいろいろと興味深いところがあるはずだが。)

また、ゲバラの写真をかかげる若者たちのシーン。同じ画面に映っていたのは、毛沢東だった。これについて、何も語るところはなかったが、しかし、毛沢東も、ある時代には「英雄」の一人だったといっていいのではないだろうか。誰を「英雄」と見なすかも、時代によって変わってくる。

そして、まったくの蛇足で書いてみるならば……二〇世紀最大の「英雄」は、なんといってもヒトラーかもしれない。

2021年8月31日記