『白きたおやかな峰』北杜夫2021-10-11

2021-10-11 當山日出夫(とうやまひでお)

白きたおやかな峰

北杜夫.『白きたおやかな峰』(河出文庫).河出書房新社.2012(新潮社.1966)
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309411392/

北杜夫の作品を読みなおしたくなって検索してみたら、この本が河出文庫版で出ていることがわかった。読んでみることにした。

若いときにこの作品は、何度か読みかえしている。新潮社の単行本であったと思う。

何十年ぶりかになるが、読みなおしてみて思うこととしては、次の二点ぐらいだろうか。

第一には、貴重な登山の記録として読めるということである。

小説であるから、無論、フィクションとして書いてある。だが、そこに描かれているカラコルム登山の様子は、まさに、その当時のものを活写している。これは、これとして、日本における登山史、あるいは、パキスタンの現地の人びとの様子として、貴重な記録なり得ている。

第二には、登山小説として面白いことである。

私は、山登りはしない。そのせいもあってか、登山関係の本はあまり読まない。深田久弥の本も、名前は知っているが、手にしたのはほんのわずかである。登山についてはうとい私であるが、この作品を読んで、山岳登山小説……このようなジャンルをあえて設定することになるかもしれないが……において、傑出した作品であることは、確かである。

この小説に出てくるのは、日本から遠征した登山隊と、現地のポーターたち、ほぼこれに限定される。女性は、基本的に出てこない。そのかわりに登場するのが、山である。未踏峰ディランが、いかにもけわしくきびしく、それでいて、優美である。まさに山の魅力、登山の魅力が満載の小説である。

以上の二点が、この小説を久しぶりに読んで思うことなどである。

北杜夫の作品は、他にも今でも手に入るものがある。読んでいないものもある。これを機会に、それらを読んでみることにしようと思っている。

2021年9月21日記

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