『地下鉄のザジ 新版』レーモン・クノー/生田耕作(訳)2021-10-16

2021-10-16 當山日出夫(とうやまひでお)

地下鉄のザジ

レーモン・クノー.生田耕作(訳).『地下鉄のザジ 新版』(中公文庫).中央公論新社.2021(中公文庫.1974)
https://www.chuko.co.jp/bunko/2021/09/207120.html

痛快な小説である。いっきに読み切ってしまった。

古典的なスタイルの小説を読んでいるなかで、こんな作品を読むと、ちょっととまどいもあるが、こういう小説もあっていいという気にもなる。

地下鉄に乗ることを楽しみにしてパリにやってきた少女、ザジ。しかし、地下鉄はストで動かない。そこから、破天荒な物語がはじまる。なかには、いわゆる下品といっていいような行為や表現がとびかう。そして、なによりも印象的なのは、「けつ喰らえ」の台詞。

これは、中公文庫で「新版」として出たので買って読んでみたもの。タイトルは、知っていた。が、手にとることなく今にいたってしまった。さて、どこでこの小説のタイトルを覚えたのか、今となってはまったく記憶がない。が、著名な作品であるということは意識していた。

しかし、内容として、ここまでぶっとんだ内容の、あるいは実験的な、あるいは斬新な小説であるとは思っていなかった。読んで、半分おどろいたというのが正直なところでもある。

古い中公文庫版が出たのが、一九七四年ということだから、私の若いときのことになる。今から、半世紀近く昔の小説であり、翻訳なのだが、ほとんど古さを感じない。(だが、読んでいって、さすがに半世紀前の文章かと感じるところが、ちょっとだけあるが。)

北杜夫や、斎藤茂吉などを読んでいる合間に読んだのだが、非常に面白かった。

2021年10月10日記