『不時着する流星たち』小川洋子2021-10-30

2021-10-30 當山日出夫(とうやまひでお)

不時着する隆盛たち

小川洋子.『不時着する流星たち』(角川文庫).KADOKAWA.2019 (KADOKAWA.2017)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321901000153/

続きである。
やまもも書斎記 2021年10月25日
『沈黙博物館』小川洋子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/25/9434850

こういうのを文学的想像力、創造力というのだろう……このように感じる作品である。これまで読んできた小川洋子の作品のなかでは、最高傑作といってよい。

短篇集である。収録するのは、次の作品。

誘拐の女王
散歩同盟会長への手紙
カタツムリの結婚式
臨時実験補助員
測量
手違い
肉詰めピーマンとマットレス
若草クラブ
さあ、いい子だ、おいで
十三人きょうだい

いずれも、歴史上の著名人、その人生、生き方にヒントを得て、あるいは、触発されて作品がなりたっている。たとえば、グレン・グールドとかエリザベス・テイラーとか。

といって、それらの人物を小説の題材として扱っているのではない。あくまでも、その人物の存在、そのような人物がいて、そのような生き方をした、そのことに触発されて、物語をつむいでいる。

どれも短い作品である。それぞれ独立した短篇として読んでみても、非常によくできている。そして、各作品の最後に、その作品であつかうことになった人物について簡略に半ページほどの記述がある。ここを読んでふりかえると、その歴史上の人物のことと、作品世界が、かすかに共鳴する。

そして、そこには、人のこころのおくそこにある密やかなささやきに耳をかたむける、かそけさ、静かさがある。まさに小川洋子ならではの作品である。

本が出たのは、二〇一七年。近年のことになる。小川洋子としては、小説家としての円熟を感じさせる作品になっている。

なお、文庫本の解説を書いているのは、鴻巣友季子。すぐれた文芸評論となっている。

2021年6月21日記

追記 2021年11月4日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年11月4日
『口笛の上手な白雪姫』小川洋子
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/11/04/9437430

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/30/9436104/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。