『口笛の上手な白雪姫』小川洋子2021-11-04

2021-11-04 當山日出夫(とうやまひでお)

口笛の上手な白雪姫

小川洋子.『口笛の上手な白雪姫』(幻冬舎文庫).幻冬舎.2020 (幻冬舎.2018)
https://www.gentosha.co.jp/book/b11422.html

続きである。
やまもも書斎記 2021年10月30日
『不時着する流星たち』小川洋子
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/30/9436104

短篇集である。収録するのは、次の作品。

先回りローバ
亡き女王のための刺繍
かわいそうなこと
一つの歌を分け合う
乳歯
仮名の作家
盲腸線の秘密
口笛の上手な白雪姫

読みながら、ふと付箋をつけた箇所がある。

「小説の中には、私の一生を何度繰り返してもまだ余るほどの時間が流れている。」(p.150)

おそらく、この短篇集、いや、小川洋子の作品のすべてに、このことばは当てはまるといってよいだろう。余計な解説や解釈はなしに、ただその作品を読んでいる時間の充足感にこそ、文学というものの本質がある。

小川洋子の作品を、適当にみつくろいながら読んできて思うことだが、たしかに小説の書き手として、テクニシャンである。だが、ただ、面白い小説を書く技巧にとどまっていない。そのテクニックが文学というものの本質に根ざしている。

現代における類い希なる小説家のひとりといっていい。

2021年6月23日記

追記 2021年11月8日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年11月8日
『博士の愛した数式』小川洋子
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/11/08/9438515

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/11/04/9437430/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。