『代表制民主主義はなぜ失敗したのか』藤井達夫2021-12-27

2021-12-27 當山日出夫(とうやまひでお)

代表制民主主義はなぜ失敗したのか

藤井達夫.『代表制民主主義はなぜ失敗したのか』(集英社新書).集英社.2021
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-721194-8

なるほど、安倍晋三のやったことは民主主義の破壊であった、ということが実感できる。

著者は、「民主主義」=「選挙」ではないといっている。漠然と、選挙で選ばれた議員が政治にかかわることを、民主主義だと思っているむきもあるかもしれないが、そうではないということに気づかされる。そして、民主主義を、その歴史からたどって、本当に民主主義を実践するには、いかにして可能なのか、問いかけるところがある。

すくなくとも、少数意見、反対意見への尊重ということがない場合、民主的とはいえない。(この意味では、安倍政権の時代は、とても民主主義の時代ということはできないことになる。)

この著者は、いわゆる一九五五年体制を評価している。その時代にあっては、政党は、ある一定の社会の階級、あるいは、階層を代表するものであり、それを基盤に選挙がおこなわれ、議員が選出されていた……このことに一定の評価を与えている。これは、昭和の昔が良かったという懐古でない。政党というものが、何を代表して組織され、選挙にのぞみ、何を実現することを、その存在意義としているのか、明確であった時代ということになろうか。それが、今日では、政党政治は、人気投票、あるいは、ポピュリズムになってしまっている。

現状の政治の問題点の分析には、なるほどと思うところが多くある。しかし、ではどうすればよいのかということになると、(私の見る限り)あまり説得力がないように読める。これは、この著者の責任ではないだろう。それほど、現在の、日本の、あるいは、世界の民主主義は危機に瀕しているいってよい。有効な対処が見いだせないでいる状況である。

現代の日本の政治状況を考えるうえでは、役に立つ一冊といっていいだろう。

2021年12月10日記