二〇二一年に読んだ本のことなど2021-12-31

2021-12-31 當山日出夫(とうやまひでお)

大晦日は、一年の振り返りとしている。今年(二〇二一)に読んだ本のことなど、書いておきたい。

まとめてある作家の作品を読んだとなると、あまり読めなかった。読めたのは、小川洋子ぐらいだったか。現在手にはいる文庫本で、その小説作品のほとんどを読んだかと思う。透明感のある文章で、ちょっと変わった日常を描いている。なるほど、小川洋子の文学世界とはこんなものなのかと納得したところである。

他にまとまって読んだのは、山田風太郎の明治小説がある。筑摩版の全集と、ちくま文庫と、古本で買えるものは買って、明治小説というくくりで刊行されたものは、読んだことになる。私が、山田風太郎の明治小説を読み始めたのは、学生のころ、『警視庁草紙』を文庫本で買ってからのことになる。このころ、司馬遼太郎も読んでいたのだが、その「坂の上の雲」の世界よりも、山田風太郎の闇の世界、敗れ去ったものの世界に、より共感して読んだものである。その後、山田風太郎の明治小説の新作が出ると単行本で買って読んできた。そのため、ほとんどの作品は再読、再々読、ということになる。が、やはり、読んで面白い。歴史のなかに消え去った無名の人びとに思いをはせることになる。それから、山田風太郎で読んで再読しておきたかったのは、『戦中派不戦日記』がある。これは、年内に講談社文庫の新版で読むことができた。

北村薫の「名短篇」のアンソロジーが、ちくま文庫で刊行になっている。これも、まとめて読んでみることにした。このようなアンソロジーに入っていなければ、読むことなく過ぎてしまった作品、作家が多い。北村薫は、そのデビューのころから読んでいる。覆面作家であった時代である。その文章、作品もいいが、傑出した文学の読み手であることを感じた。

『戦争と平和』の光文社古典新訳文庫(望月哲男訳)が、六冊完結したので、まとめて読むことにした。以前に、新潮文庫、岩波文庫などでも読んでいる。新しい訳で読んでみて、なるほどこの作品が、世界文学のなかで名作とされている理由がようやく納得できた気がする。歴史を背景として、登場人物たちのドラマチックな人間模様が描かれている。

読めなかった本というと、『源氏物語』の岩波文庫版がある。今年、ようやく九冊が完結した。まとめて読もうと思って、これは積んだままになっている。

今年は、テレビのこともよく書くことになった。四月から始まった放送として、NHKが、「プロジェクトX」を再放送した。これは、録画しておいて欠かさず見た。放送の当時は、特に印象に残ることのなかった番組であるが、再放送を見ると、面白い。いくつかの番組は、昭和戦後の日本の普通の人びとの生活誌、生活史として、きわめて興味深い内容であった。

また、「映像の世紀」「新・映像の世紀」「映像の世紀プレミアム」も、再放送を、すべて見たと思う。見て思うことは、実に様々である。よくこんな場面の映像資料が残っていたかと驚くものがいくつもある。と同時に、残された映像資料に対する資料批判というという目も、必要になってくることを、強く感じた。

2021年12月30日記