『〈平成〉の正体』藤井達夫2022-01-07

2022年1月7日 當山日出夫(とうやまひでお)

〈平成〉の正体

藤井達夫.『〈平成〉の正体-なぜこの社会は機能不全に陥ったのか-』(イースト新書).イースト・プレス.2018
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781651057

『代表制民主主義はなぜ失敗したのか』が面白かったので、同じ著者の本を読んでおくことにした。これは、少し前の刊行。2018年の刊行。平成三〇年になる。平成の最後である。

今(二〇二一)の時点から読んでみるならば、どれもごく普通に論じられることばかりである。が、非常に手際よく、今日の日本の社会や政治の状況、問題点などを、論点を整理して書いてある。現在の視点から見ても、なるほどと思うとことが多々ある。

目次を示してみるならば以下のとおり。

ポスト工業化と液状化する社会
ネオリベ化した社会の理想と現実
格差社会の「希望は戦争」
ポスト冷戦と強化される対米依存
五五年体制の終焉と挫折した政治改革
「日常の政治」からポスト平成を切り開く

また、最終章に、辻田真佐憲との対談「保守とリベラルは新しい「物語」をつくれるか?」をおさめる。

平成という時代は、三〇年ほどつづいた。それは、冷戦の終結からバブル経済の崩壊とともにスタートすることになった。今になってみれば、失われた三〇年というべき時代である。このあいだに、社会は変わった。いわく、グローバル化、デジタル化、格差、新自由主義……いくつかの、この時代を説明することばが登場してきている。そのことばのなかに翻弄されてきた時代であった。いや、今も、翻弄されている。

とにかく、平成の終わりの何年か、それは、安倍政権の時代ということになるが、この時代の空虚さを実感することになる。過去の一〇年ほど、この社会は、何を目指してきたということなのだろうか。そこに、COVID-19である。これほど、この日本の社会の、また、政治の、無力、無能ということを感じたことはなかった。

今の日本のおかれた状況を冷静に振り返ってみる意味でも、この本は価値のある本だと思う。

2021年12月17日記