『刺青・秘密』谷崎潤一郎/新潮文庫2022-01-21

2022年1月21日 當山日出夫(とうやまひでお)

刺青・秘密

谷崎潤一郎.『刺青・秘密』(新潮文庫).新潮社.1969(2011.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100503/

谷崎潤一郎の初期の短篇集である。新潮文庫版では、次の作品が収録してある。

刺青
少年
幇間
秘密
異端者の悲しみ
二人の稚児
母を恋うる記

やはり印象に残るのは、『刺青』であろうか。谷崎潤一郎の最初の作品といってよいものである。描かれているのは、エロティシズムであり、江戸趣味、日本趣味とでもいうべき美意識、それから、マゾヒズムもふくまれている。短い作品であるが、印象が強い。この作品は、いろんな作品集などで、なんどか読んでいるかと思う。何度読んでも、完璧な美意識だと感じるところがある。

ところで、今回読んでみて、この作品中にも、女性の足に対するフェティシズムが見られることを確認したことになる。これは、谷崎の作品の特徴の一つといっていいだろう。晩年の『瘋癲老人日記』まで、いろんな作品に見られる。

『秘密』も、忘れてしまったが、近年、何かのアンソロジーで読んだかと覚えている。これも、これまでに何度か接したことのある作品である。これを読むと、大正時代の東京という街のことを考える。これは、漱石が『三四郞』などの作品で描いた東京の街の延長線上にあるものともいえる。これを、鷗外は「普請中」といったことは、知られていることであろう。関東大震災、太平洋戦争の前の東京である。その中心は、今の下町といわれる界隈にあった時代である。その東京の街を、魅力的に、あるいは、幻想的、蠱惑的に描き出した、絶妙な作品といえるだろう。

それから、この作品に見られる、探偵趣味というべきもの。これは、大正時代に流行ったものと捕らえておいていいのかと思う。そういえば、芥川龍之介なども、探偵趣味的な作品を残してもいる。

『異端者の悲しみ』は、自伝的作品であるという。そういわれて読むと、そのように読める。が、今日広く読まれる谷崎潤一郎の作品群からすると、ちょっと、まさに「異端」の作品である。谷崎潤一郎の文学を理解するためには、重要な位置をしめる作品となる。

その他、なるほど、これは谷崎潤一郎の世界だなと感じさせるものが収録されている。

2022年1月20日記