『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』池上彰・佐藤優2022-02-12

2022年2月12日 當山日出夫(とうやまひでお)

激動 日本左翼史

池上彰・佐藤優.『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』(講談社現代新書).講談社.2021
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000355536

先の巻に続けて読んだ。

やまもも書斎記 2022年2月11日
『真説 日本左翼史 戦後左翼の源流 1945-1960』池上彰・佐藤優
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2022/02/11/9463029

この巻であつかってあるのは、共産党と社会党の確執。それから、学生運動。この時代のことになると、私の記憶の及ぶ範囲のことになる。思うことはいろいろとある。

かつて、左翼は正義であった。このような記憶が私にはある。それが共産党であるか、社会党であるかは別にして、そこには正しさというもの、理想というものが見えていた。いや、それは、幻想であったのかもしれない。しかし、確かに左翼は正義を目指していた。

それが幻滅したのは、学生運動の衰退、東西冷戦の終結……このあたりを決定的な契機として、もはや左翼に正義を感じなくなった。むしろ、その欺瞞が明らかになってきたといってもいいだろうか。

思うのだが、左翼を論じるとき、このシリーズでは意図的に右翼のことを避けていると思う。時の政府、政権、体制に対する批判という意味では、右翼と左翼と相通じるところがある。通底するものがあるといってもいいだろう。このあたりのところを、避けて左翼だけ論じるのもどうかなという気がしてならないのだが、しかし、これはそのように思って読めば、次のステップの議論として、右翼を含めた反体制社会運動史というものが浮かびあがってくるのかもしれない。

それから、学生運動、特に、日米安保闘争については、いまだ評価が難しい面があるのではと感じないではいられない。が、このあたりについて、この本は、かなり丁寧に語っているという印象がある。反政府運動であり、反米運動であり、また、愛国の運動でもあった。そして、それは、一定程度は一般市民からの支持もあるものであった。

そして、さらに思うこととしては……この本ではあまり語られないのだが……世界的な、若者の反乱の時代という潮流を抜きには考えることができないとも思う。ちょっとだけ、フランスの五月革命のことが出てくるのだが。ここは、世界的な若者の反体制運動のうねりということを、考えておく必要があろうかとも思う。

「日本左翼史」は、次の巻は冷戦終結以後の社会党の衰退というところになるらしい。この時代になると、私の体験的な記憶のうちの出来事になる。

2022年2月4日記