『古都』川端康成/新潮文庫2022-02-17

2022年2月17日 當山日出夫(とうやまひでお)

古都

川端康成.『古都』(新潮文庫).新潮社.1968(2010.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100121/

若い時、確か高校生ぐらいの時に読んだかと覚えている。映画化されていることは知っているが、見てはいない。

今になって読みかえしてみて思うこととしては、次の二点ぐらいである。

第一に、小説として。

はっきりいって小説としては、破綻している。細部にわたる描写については、さすがに川端康成と感じさせるとことろは随所にあるのだが、しかし、全体としてみて、一編の小説としては、どうにも面白くない。たしかに波瀾万丈のストーリーで読ませるという作品でないことは確かなのだが、しかし、その筋の運び方があまりに平板である。面白くない。

第二に、京都を舞台として。

京都を描いた小説ということでは、まず名前のあがる作品かもしれない。確かに読んでみれば、春の桜からはじまって冬景色まで、京都の街の四季の風物とともにこの小説は展開している。あるいは、作者は、京都の四季の風景を描きたかったが故にこの小説を書いたのかもしれない。(ただ、この京都の季節の移り変わりと、小説のストーリーが融合しているかどうかとなると、これは、微妙なところがある。)

以上の二つのことを思ってみる。

書いてみると、この小説はつまらない作品といえることになりそうなのだが、しかし、読んでみると、やはり川端康成の作品だと感じる。全体として、京都の街を背景に描いた双子の姉妹の物語として読める。

この小説を書いたとき、作者は、睡眠薬の依存症で苦しんでいた時期である。そのせいもあろうか、読んでいて、ところどころで文章につまづくところがある。また、いくつか記述が飛躍していると感じてしまうところもある。だが、そのようなところでも、じっくりと読みかえして読んでみるならば、そこには凝縮された川場康成の文学世界だと感じるところがある。

京都を描いた近代の文学としては、これからも読まれている作品であるにちがいないと思う。

2022年2月5日記