『物語 ウクライナの歴史』黒川裕次/中公新書 ― 2022-04-02
2022年4月2日 當山日出夫(とうやまひでお)

黒川裕次.『物語 ウクライナの歴史-ヨーロッパ最後の大国-』(中公新書).中央公論新社.2002
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2002/08/101655.html
話題の本というか、売れている本らしいので、読んでみることにした。
私のウクライナについての予備知識は、わずかである。旧ソ連の一部であった国、チェルノブイリ原発のある国、穀倉地帯……この程度のものである。連日、テレビのニュースで、ウクライナのことを報じているのだが、肝心のウクライナという国について知らないのはこころもとない。とにかく、手頃な本だろうと思って読んでみることにした。
この本が刊行されたのは、二〇〇二年である。ソ連の崩壊の後であるが、近年のクリミア半島をめぐる問題のおこる前の本ということになる。著者は、駐ウクライナ大使であった。その経験をもとに書かれている。ウクライナ、あるいは、ソ連、ロシアという国については、どちらかといえば友好的な立場で書かれているといっていいだろう。少なくとも、ロシアに対して、批判的な立場はとっていない。
ロシアがウクライナを侵略したということは、直接にはNATOの拡大をめぐる昨今のヨーロッパの状況ということもあるにちがいない。このあたりは、テレビなどでよく解説されるところである。だが、歴史的にさかのぼってウクライナとロシアは、どのような関係であったのか。また、現在のウクライナ人びとは、どのような歴史的経緯があって、今日のウクライナという国家を形成することになったのか、さらには、ウクライナの土地はどのような歴史があったのか……このようなことについて、概略を教えてくれる。
おそらく、ウクライナとロシアは、歴史的に友好国というよりも、愛憎相半ばする関係といっていいのかもしれない。といって、敵対してきたばかりの歴史でもない。
また、ポーランドなどとの関係をはじめとして、ウクライナから移住した人びとのすむ国としての、欧米の国々との関係も興味深いものがある。また、日本とも結びつきのある国であることが理解される。
この本は、二〇〇二年の本であるからこそ、今となっては貴重な記述になっているというべきであろうか。今の時点から、ウクライナとロシアの歴史を語るとするならば、とてもこのようには書けないだろう。そして、歴史は後戻りできない。これから書かれるかもしれない、ウクライナについての本は、もはや、この本のような視点はとることができないともいえる。
ともあれ、ウクライナのことを考えるうえで、読んでおいて損のない本だと思う。
2022年4月1日記
話題の本というか、売れている本らしいので、読んでみることにした。
私のウクライナについての予備知識は、わずかである。旧ソ連の一部であった国、チェルノブイリ原発のある国、穀倉地帯……この程度のものである。連日、テレビのニュースで、ウクライナのことを報じているのだが、肝心のウクライナという国について知らないのはこころもとない。とにかく、手頃な本だろうと思って読んでみることにした。
この本が刊行されたのは、二〇〇二年である。ソ連の崩壊の後であるが、近年のクリミア半島をめぐる問題のおこる前の本ということになる。著者は、駐ウクライナ大使であった。その経験をもとに書かれている。ウクライナ、あるいは、ソ連、ロシアという国については、どちらかといえば友好的な立場で書かれているといっていいだろう。少なくとも、ロシアに対して、批判的な立場はとっていない。
ロシアがウクライナを侵略したということは、直接にはNATOの拡大をめぐる昨今のヨーロッパの状況ということもあるにちがいない。このあたりは、テレビなどでよく解説されるところである。だが、歴史的にさかのぼってウクライナとロシアは、どのような関係であったのか。また、現在のウクライナ人びとは、どのような歴史的経緯があって、今日のウクライナという国家を形成することになったのか、さらには、ウクライナの土地はどのような歴史があったのか……このようなことについて、概略を教えてくれる。
おそらく、ウクライナとロシアは、歴史的に友好国というよりも、愛憎相半ばする関係といっていいのかもしれない。といって、敵対してきたばかりの歴史でもない。
また、ポーランドなどとの関係をはじめとして、ウクライナから移住した人びとのすむ国としての、欧米の国々との関係も興味深いものがある。また、日本とも結びつきのある国であることが理解される。
この本は、二〇〇二年の本であるからこそ、今となっては貴重な記述になっているというべきであろうか。今の時点から、ウクライナとロシアの歴史を語るとするならば、とてもこのようには書けないだろう。そして、歴史は後戻りできない。これから書かれるかもしれない、ウクライナについての本は、もはや、この本のような視点はとることができないともいえる。
ともあれ、ウクライナのことを考えるうえで、読んでおいて損のない本だと思う。
2022年4月1日記
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