『日本語で読むということ』水村美苗/ちくま文庫2022-04-04

2022年4月4日 當山日出夫(とうやまひでお)

日本語で読むということ

水村美苗.『日本語で読むということ』(ちくま文庫).筑摩書房.2022(筑摩書房.2009)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480438010/

水村美苗のエッセイ集である。『日本語が亡びるとき』の続編ということでもないようである。いろんな雑誌などに書いたものから、文学作品に関連するものを選んで編集してある。

水村美苗で読んだ本というと、『日本語が亡びるるとき』の他には、『続 明暗』がある。その経歴については、ひととおりの知識しかない。まあ、強いていえば、アメリカ育ちということもあるのだろう、日本文学について、ある意味で純粋にとらえているところがある。

文学エッセイ集として読んで面白い。なるほど、水村美苗の感覚で、この作品はこのように読むことができるのかと、いくつか興味深いところがある。

なかで、水村美奈が好きだと言っているもので、興味深かったのは、幸田文と山田洋次。

幸田文については、若いころにいくつかの作品を手にした記憶はあるのだが、あまりまとまってそれと意識して読んだということはない。この本を読んで、幸田文の書いたものを読みかえしてみたくなった。

山田洋次の映画は、はっきり言って私はあまり好きではない。確かに、「男はつらいよ」シリーズなど、「日本」というものを強く感じさせる。これについては、かなり好き嫌いがはっきりするのではないかと思っている。私は、山田洋次の描く「日本」というものを理解しないではないが、しかし、そこに共感してしまうことからは距離を置きたいと思っているのである。

全体として、文学を読むということの楽しみが何であるか、それを再認識させてくれるエッセイ集になっている。

2022年3月24日記