「雪国 -SNOW COUNTRY-」 ― 2022-04-18
2022年4月18日 當山日出夫(とうやまひでお)
このドラマも、川端康成没後五〇年ということなのかなとも思うが、NHKが力をいれて作ったドラマのようなので、録画しておいて翌日の朝にゆっくりと見た。
このような作りの「雪国」もあるのかな、というのがまずは思ったところである。
思うこととしては、次の三点ぐらいがある。
第一には、原作『雪国』をかなり忠実に映像化して見せたところ。
『雪国』は、これまでに何度か読みかえしたことのある作品である。今年になってからも読んでいる。
やまもも書斎記 2022年2月14日
『雪国』川端康成/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2022/02/14/9464074
特に原作とのかかわりで印象深いシーンが、冒頭近くにある、雪国の宿を再訪した島村と駒子が出会うところ。この場面は、このように映像化できるのか、と感心して見ていた。また、夜に酔って島村の部屋を訪れるシーンなど、興味深かった。
『雪国』のドラマ化としては、たくみに作ってあると感じさせるところがいくつかあった。
第二には、原作『雪国』には無い部分。ドラマで追加したところ。
特に、後半の、繭倉での火災の後の、駒子の視点からの部分。ここは、このドラマ、脚本のオリジナルである。普通の「雪国」なら、火災のシーンで終わるところである。それが、そこから、駒子に視点が切り替わって、これまでのところを、駒子の目から回想していく。これは、斬新な作り方であり、『雪国』とは、このような解釈で見ることもできるのかと、思ったところでもある。
えてして、『雪国』は、男性である島村の視点から読むことになる。それを、女性である駒子の視点から見ると、どのような物語になるのか、このところは実に興味深い。
第三には、原作『雪国』にあって、ドラマでは割愛されていたところ。
原作では、夏にも、島村はやってきている。その新緑のシーンが、小説では非常に印象的に描かれているのだが、このドラマでは、そのような場面が無かった。これは、冬にロケをして、雪の場面を取り込んでということになるので、夏の場面は撮れなかったということなのだろうと思う。
夏の場面だったかと思うが……宿の畳の上で死んでいる虫の死骸をみて、生命ということに島村が思いをめぐらすところは、『雪国』という小説のなかでも、非常に強く印象に残る場面なのだが、これはなかった。それから、せっかくの雪の季節なのに、縮を雪に晒すところもなかった。
だいたい、以上の三点のことを思ってみる。
このドラマでも、「徒労」ということばが使われていた。『雪国』という小説のなかで、何度か登場してくることばである。まさに「徒労」であるからこそ、駒子という女性は魅力的であるというべきなのかもしれない。
これまで、『雪国』は何度かドラマ化されてきている。そのいくつかを見たかと憶えているのだが、今回のドラマは、特に印象に残るといっていいだろう。島村、駒子、葉子などについて、新たな人物像を示している。これは、新しい時代の「雪国」になっていると思う。
2022年4月17日記
このドラマも、川端康成没後五〇年ということなのかなとも思うが、NHKが力をいれて作ったドラマのようなので、録画しておいて翌日の朝にゆっくりと見た。
このような作りの「雪国」もあるのかな、というのがまずは思ったところである。
思うこととしては、次の三点ぐらいがある。
第一には、原作『雪国』をかなり忠実に映像化して見せたところ。
『雪国』は、これまでに何度か読みかえしたことのある作品である。今年になってからも読んでいる。
やまもも書斎記 2022年2月14日
『雪国』川端康成/新潮文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2022/02/14/9464074
特に原作とのかかわりで印象深いシーンが、冒頭近くにある、雪国の宿を再訪した島村と駒子が出会うところ。この場面は、このように映像化できるのか、と感心して見ていた。また、夜に酔って島村の部屋を訪れるシーンなど、興味深かった。
『雪国』のドラマ化としては、たくみに作ってあると感じさせるところがいくつかあった。
第二には、原作『雪国』には無い部分。ドラマで追加したところ。
特に、後半の、繭倉での火災の後の、駒子の視点からの部分。ここは、このドラマ、脚本のオリジナルである。普通の「雪国」なら、火災のシーンで終わるところである。それが、そこから、駒子に視点が切り替わって、これまでのところを、駒子の目から回想していく。これは、斬新な作り方であり、『雪国』とは、このような解釈で見ることもできるのかと、思ったところでもある。
えてして、『雪国』は、男性である島村の視点から読むことになる。それを、女性である駒子の視点から見ると、どのような物語になるのか、このところは実に興味深い。
第三には、原作『雪国』にあって、ドラマでは割愛されていたところ。
原作では、夏にも、島村はやってきている。その新緑のシーンが、小説では非常に印象的に描かれているのだが、このドラマでは、そのような場面が無かった。これは、冬にロケをして、雪の場面を取り込んでということになるので、夏の場面は撮れなかったということなのだろうと思う。
夏の場面だったかと思うが……宿の畳の上で死んでいる虫の死骸をみて、生命ということに島村が思いをめぐらすところは、『雪国』という小説のなかでも、非常に強く印象に残る場面なのだが、これはなかった。それから、せっかくの雪の季節なのに、縮を雪に晒すところもなかった。
だいたい、以上の三点のことを思ってみる。
このドラマでも、「徒労」ということばが使われていた。『雪国』という小説のなかで、何度か登場してくることばである。まさに「徒労」であるからこそ、駒子という女性は魅力的であるというべきなのかもしれない。
これまで、『雪国』は何度かドラマ化されてきている。そのいくつかを見たかと憶えているのだが、今回のドラマは、特に印象に残るといっていいだろう。島村、駒子、葉子などについて、新たな人物像を示している。これは、新しい時代の「雪国」になっていると思う。
2022年4月17日記
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