『異邦人』カミュ/窪田啓作(訳)/新潮文庫2022-07-02

2022年7月2日 當山日出夫(とうやまひでお)

異邦人

カミュ.窪田啓作(訳).『異邦人』(新潮文庫).新潮社.1954(2014.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/211401/

名作、古典の読み直しである。この本も若いときに手にしたような記憶があるのだが、忘れてしまっている。ただ、そのはじまりは憶えていた……「きょう、ママンが死んだ。」

カミュの作品では、最近、『ペスト』が岩波文庫と光文社古典新訳文庫で刊行になった。これらは、両方とも読んだ。

やまもも書斎記 2021年6月10日
『ペスト』カミュ/三野博司(訳)
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/06/10/9386381

やまもも書斎記 2021年9月30日
『ペスト』カミュ/中条省平(訳)
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/09/30/9428168

『異邦人』は、『ペスト』とならんでカミュの代表作である。私の若いころ、カミュはちょっとした流行であったように思い出される。内容の理解はともかく、とにかく読んでおくべき本としてあった。

何十年ぶりになるだろうか、『異邦人』を読みかえしてみて、思うところは次の二点。

第一に、とにかく面白いことである。

もうこの年になって本を読むと、文学史的にどうかとか、思想としてどうかということは、さほど気にならなくなっている。それよりも、とにかく読んで面白いかどうか、ということが重要である。単純に考えて、『異邦人』は面白い。そう長くない小説ではあるが、いっきに読んでしまった。

第二に、神の問題。

この小説の最終章で、司祭と対話するシーンがある。おそらく、カミュの思想、文学史的位置づけとしては、ここの部分が重要なのであろう。二一世紀の日本で、この作品(翻訳)を読んで思うことは、なるほどそういう考え方で、この小説の出来事、主人公の行動を考えることができるのか、という興味である。おそらく、この作品の発表された当時のフランスという国においては、まさに、この小説の主人公の考えること、行動は、神の問題と直結して考えるべきことであったにちがいない。

以上の二つのことを思ってみる。

さて、今、三島由紀夫を読みつつある。ちょっと中断した感じではあるが、これは、とにかく読み進めていきたい。そのかたわら、世界の古典、名作の読み直しということにしたい。『ペスト』も再度読んでおきたい気がする。もとにもどって、『ペスト』という小説を読んでおきたい。それからカミュの作品は未読のものがいくつかある。これも読んでおきたいと思う。

2022年6月3日記