『鼻/外套/査察官』ゴーゴリ/浦雅春(訳)/光文社古典新訳文庫2022-08-19

2022年8月19日 當山日出夫

鼻

ゴーゴリ.浦雅春(訳).『鼻/外套/査察官』(光文社古典新訳文庫).光文社.2006
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334751166

ゴーゴリの作品、若いとき、中学生か高校生のころに手にしたことああるように思うのだが、もう忘れてしまっている。なんとなく、ロシア文学を読みたいと思って、光文社古典新訳文庫のいくつかを読んでいる。

面白い。言ってみれば、落語的荒唐無稽リアリズム小説とでも言うことができるだろうか。ただ、ゴーゴリが、このような小説を書くにいたった背景としては、その当時のロシア文学をとりまく、込み入った事情があったらしい。このことは、この文庫本の解説(浦雅春)に詳しい。

だが、今日の読者としては、この作品は楽しんで読めばいいと思う。そして、読んで楽しい作品である。

「鼻」のなんとも荒唐無稽なことか。また「外套」も面白い。(ただ、これは、どうしても、芥川龍之介など思って読んでしまうのだが。)「査察官」も、世の中の人間なんてこんなものかと思って読んでしまうことになる。

どの作品も読んで面白いのだが、そこに、どことなく当時の世相の批判、権力批判というようなものを感じ取ってしまう。これは、作者の意図したことではなかったようなのだが、文学作品の受容という観点からは、そう思って読んでもいいことなのかとも思う。

それから、翻訳の問題としては、落語的に訳してある。あたかも落語の筆記本を読むような雰囲気である。これは意図的にそうしたものであるし、ゴーゴリの作品は、これまでもそのように訳されてきた経緯もあるようだ。

日本語学として考えるならば、現代では、翻訳論、あるいは、役割語というような観点から分析することが可能になるだろう。が、もう特にそのようなことは気にしないでおく。ただ、読んで面白ければいいと思って楽しんで読んでおくことにしたい。

2022年6月22日記