『スペードのクイーン/ベールキン物語』プーシキン/望月哲男(訳)2022-09-02

2022年9月2日 當山日出夫

スペードのクイーン

プーシキン.望月哲男(訳).『スペードのクイーン/ベールキン物語』(光文社古典新訳文庫).光文社.2015
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334753054

プーシキンの名前は知っているのだが、読んではいなかったように思う。若い時に手にしたことがあったかもしれないが、とうに忘れてしまっている。

『スペードのクイーン』は、従来『スペードの女王』のタイトルで知られている。私もこのタイトルで憶えている。光文社古典新訳文庫では、翻訳にあたってタイトルを変更することが時々ある。これもその一つである。解説によると、「クイーン」の方が原文に近いということである。

『スペードのクイーン』であるが、平明な文章なのだが、どうも今一つよくわからないというのが正直なところ。これは、題材となっているトランプのゲームが、具体的にイメージしにくいということもあるのかもしれない。今の私は、トランプのゲームなどまったすることがない。

それから、出てくる数字の意味。何かを表象していることは分かるのだが、いったい何のことなのか、これもはっきりしない。まあ、文学的な表象というのは、そう簡単に手の内がばれるようなものではないことは確かなのだが。これをめぐっては、いろんな研究者がいろんなことを言っているようだ。その詳解は、この文庫本の解説に詳しい。

『ベールキン物語』、これは読んで面白い。一九世紀の初めのころ、日本ではまだ江戸時代であるが、このような時代にこんな小説がロシアで書かれていたというのは、率直に興味深い。

ともあれ、解説によると、プーシキンが生きた時代、ロシアで文学にたずさわるというのは、かなり大変なことであったようだ。これは、ロシアの文学史や歴史についての予備知識があるならば、面白く読めるところなのだろう。だが、そのようなことをぬきにして、ただ現代の感覚で読んでも、「ベールキン物語」は読んで面白い。短篇集として非常によく出来ている。

プーシキンでは他に『大尉の娘』が、光文社古典新訳文庫で読める。これも読んでおくことにしたい。

2022年6月30日記