『大名倒産』(上)浅田次郎/文春文庫2022-09-23

2022年9月23日 當山日出夫

大名倒産(上)

浅田次郎.『大名倒産』(上)(文春文庫).文藝春秋.2022(文藝春秋.2019)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167919283

久々に浅田次郎の本を読んでいる。ふと目にとまった文庫本の新刊である。浅田次郎は、「プリンズンホテル」シリーズや「天切り松」シリーズなど、昔読んだものである。また、「蒼穹の昴」もシリーズを全部読んだ。ただ、このシリーズについていえば、読んでいくとだんだんつまらなくなってくる。そのせいもあって、最近は、あまり浅田次郎の本を読まなくなった。

『大名倒産』であるが、浅田次郎の時代小説と割り切って……ひとつの小説世界と思って読むことになる。あまりリアルな、時代考証のことなど考えない方がいい。

しかし、この本は面白い。時代設定は、幕末。東北の小さな藩。江戸時代二六〇年の平和な暮らしのせいもあるが、経営は行き詰まっている。こうなったら、「計画倒産」しかない。先代藩主は、藩の倒産を目論む。一方、その跡取りとなった若者は、いたって生真面目。倒産の瀬戸際にある藩をなんとかしようとする。

まあ、確かに、時代の流れとしては、この小説で描いた時代の後に明治維新……いやこの小説の作者としては「御一新」と言った方がいいだろう……が起こって、「江戸時代」というものが、ちゃらになってしまう。さて、この藩は、無事に明治維新を迎えることができるであろうか。

まだ上巻を読んだところであるが、思わずに読みふけってしまった。

浅田次郎の小説は、リアリズムの小説ではない。その小説世界……一種の幻想性がつきまとう世界……と、うまく波長があうと、実に面白い。この小説は、それが成功している例と言っていいだろう。

これは、「金が無い」の物語である。とりあえず上巻を読んだ。つづけて下巻を読むことにしよう。

2022年9月5日記

追記 2022年9月24日
下巻については、
やまもも書斎記 2022年9月24日
『大名倒産』(下)浅田次郎/文春文庫
https://yamamomo.asablo.jp/blog/2022/09/24/9528258

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