『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 増補新版』吉川浩満/ちくま文庫2022-12-10

2022年12月10日 當山日出夫

人間の解剖は猿の解剖のための鍵である

吉川浩満.『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 増補新版』(ちくま文庫).筑摩書房.2022
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480438348/

もとは、筑摩書房から二〇一八年に刊行の本である。それに加筆して、文庫化したものである。

以前、単行本が出たときに買って、ざっと読んだ本である。文庫本になり、加筆してある箇所もあるので、今回はじっくりと読んでみることにした。

思うところは、二つのことである。

第一に、やはり読んで面白い。

進化論とかAIとか行動経済学とか、最新の研究動向について、分かりやすく解説してある。なるほど、今の「知」の最前線の様相とは、こんなふうになっているのかと、思わず感心して読んでしまうところがあった。

第二に、もう今となってはちょっとつらいということ。

もう老後の読書と決めて本を読む生活をおくりたいと思っている。以前なら、この本で紹介されているような本を、自分でも読んで考えてみたいと思ったはずである。だが、もうそのような気はあまりおこらない。そんなもんなのかなと思って読んでしまうところがあるというのが、実情でもある。

以上の、二点の相反する感想をいだくのだが、しかし、これは、特に若い人にとってはおすすめの本としておいていいだろう。特に、自然科学と人文学を架橋するというこころみにおいて、この仕事は、かなり成功していると言ってよいと思う。

私の専門の分野である、言語の研究という領域においても、認知科学からのアプローチがあることは知っているのだが、もう追いついていくのがつらくなっているというのが、正直なところである。それよりも、若いころに読んだ、構造主義言語学の本など、もう一度読み直してみたくなっている。

とは言っても、いろいろ興味深いところもある。『利己的な遺伝子』は、かなり以前に読んでいる。だが、この本が、そんなに画期的な論考であるとは、はっきり言って読んだときには思わなかった。『人間の解剖は……』を読んで、『利己的な遺伝子』の価値を再認識したということもある。

以上のようなことを思うのだが、これは非常によくできた読書案内にもなっている。全部の方面については無理であるが、興味のあるところで、簡単に読めそうな本は読んでみようかという気になっている。『サピエンス全史』も買ってはあるのだがまだ読んでいない。これも読んでおきたい。

2022年11月25日記

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