『夜明け前(が一番暗い)』内田樹2023-03-18

2023年3月18日 當山日出夫

夜明け前(が一番暗い)

内田樹.『夜明け前(が一番暗い)』.内田樹.朝日新聞出版.2023
https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=24050

『アエラ』に連載の文章をまとめたもの。私は『アエラ』は、かつて毎号読んでいた時期があった。朝日新聞と一緒に配達してもらっていた。だが、もう止めてしまってかなりになる。はっきり言って、読んで面白くないからである。端的にいえば、言論、報道のメディアから、お受験雑誌になってしまったと感じたのである。

だから、内田樹の文章は、『アエラ』では読んでいない。内田樹の文章を読むために『アエラ』を買おうとは思わない。

この本に収められた文章は、二〇一八年から二〇二二年までのものである。なるほどこのような時代があったのかと、思い出しながら読むことになる。アメリカではトランプ大統領がいた。日本では、新型コロナウィルスのパンデミックであった。オリンピックがあった。そして、ソ連のウクライナ軍事侵攻があった。今になってみれば、いや、今でもそうなのだが、激動の時代である。

読んでみて、共感できるところが半分、あまり感心しないと感じるところが半分、というあたりであろうか。全体としては、そう卓見に富んだ時評集というよりは、むしろ、常識的な備忘録という印象が残る。

意外と少ないと感じるのが、旧統一教会関係のこと。ほとんど言及がない。意図的に、この話題を『アエラ』で書くことを避けたのか、と思ってしまう。宗教にかかわることとしては、いろいろと言うべきことがあるだろうにと思うが、さてどうだろうか。

収録してあるのはどれも短い文章なので、「情理をつくして説く」という雰囲気のものは無い。

もし、この本が将来も読まれることがあるとしたら、ある時代の雰囲気をいくらかでもつたえたものとして、懐古的に読まれることになるだろうと思う。そして、激変する時代の流れのなかで、常識的判断を保つということの価値を教えてくれる本だと思う。

2023年2月22日記