『街道をゆく 陸奥のみち、肥薩のみち ほか』司馬遼太郎/朝日文庫 ― 2023-07-12
2023年7月12日 當山日出夫
司馬遼太郎.『街道をゆく 陸奥のみち、肥薩のみち ほか』(朝日文庫).朝日新聞出版.2008
https://publications.asahi.com/kaidou/03/index.shtml
「街道をゆく」のシリーズとしては、三冊目になる。一九七二年、「週刊朝日」連載。
収録するのは、
「陸奥のみち」
「肥薩のみち」
「河内みち」
「陸奥のみち」では、東北地方を行く。主に岩手県、旧南部藩の地域である。安藤昌益のこと、高山彦九郎のことなど出てくる。久慈のことも登場する。たまたま、NHKの朝ドラの再放送で「あまちゃん」をやっているので見ている。司馬遼太郎が旅したころの久慈の街は、こんなふうだったかと思うところがある。ドラマで描いている、過疎に悩む地方という感じではない。
「肥薩のみち」では、熊本から鹿児島への旅になる。ちょうど司馬遼太郎が、『翔ぶが如く』を書いていたときのことである。この小説は、若いころに読んでいる。この本においても、熊本それから薩摩という地域について、考えをめぐらせている。
「河内みち」では、司馬遼太郎の住まいしている河内のことが語られる。印象深いのは、高貴寺のこと。「律」の寺である。観光化することをこばんでいる。ここで、慈雲のことが出てくる。若いとき、国語史の資料という観点からであるが、慈雲の書いたものを手にしたことを思い出す。これは、探せば今でも持っているはずの本である。
この本でも、基本的に司馬遼太郎史観というものが、かなり理屈っぽく語られるところがある。司馬遼太郎は、日本の歴史を、米作を軸に考えようとしている。東北の南部藩というような、たびたび冷害にみまわれながらも、米作を基本としてなりたった経緯を考えている。たぶん、今の歴史学の考え方からするならば、米作以外の産業をもっと考慮することになるだろうとは思うのだが。
司馬遼太郎の書いていることに、同意できるところもあるし、できかねるところもある。しかし、司馬遼太郎の死後、三〇年近くがたった今から読んでみると、この文章が書かれた時代、一九七〇年代のはじめごろ……もう今から五〇も前のことになる……その時代の日本の雰囲気を伝えてくれるものとして読める。これはこれとして、貴重な記録としての紀行文になっていると思う。
2023年7月3日記
https://publications.asahi.com/kaidou/03/index.shtml
「街道をゆく」のシリーズとしては、三冊目になる。一九七二年、「週刊朝日」連載。
収録するのは、
「陸奥のみち」
「肥薩のみち」
「河内みち」
「陸奥のみち」では、東北地方を行く。主に岩手県、旧南部藩の地域である。安藤昌益のこと、高山彦九郎のことなど出てくる。久慈のことも登場する。たまたま、NHKの朝ドラの再放送で「あまちゃん」をやっているので見ている。司馬遼太郎が旅したころの久慈の街は、こんなふうだったかと思うところがある。ドラマで描いている、過疎に悩む地方という感じではない。
「肥薩のみち」では、熊本から鹿児島への旅になる。ちょうど司馬遼太郎が、『翔ぶが如く』を書いていたときのことである。この小説は、若いころに読んでいる。この本においても、熊本それから薩摩という地域について、考えをめぐらせている。
「河内みち」では、司馬遼太郎の住まいしている河内のことが語られる。印象深いのは、高貴寺のこと。「律」の寺である。観光化することをこばんでいる。ここで、慈雲のことが出てくる。若いとき、国語史の資料という観点からであるが、慈雲の書いたものを手にしたことを思い出す。これは、探せば今でも持っているはずの本である。
この本でも、基本的に司馬遼太郎史観というものが、かなり理屈っぽく語られるところがある。司馬遼太郎は、日本の歴史を、米作を軸に考えようとしている。東北の南部藩というような、たびたび冷害にみまわれながらも、米作を基本としてなりたった経緯を考えている。たぶん、今の歴史学の考え方からするならば、米作以外の産業をもっと考慮することになるだろうとは思うのだが。
司馬遼太郎の書いていることに、同意できるところもあるし、できかねるところもある。しかし、司馬遼太郎の死後、三〇年近くがたった今から読んでみると、この文章が書かれた時代、一九七〇年代のはじめごろ……もう今から五〇も前のことになる……その時代の日本の雰囲気を伝えてくれるものとして読める。これはこれとして、貴重な記録としての紀行文になっていると思う。
2023年7月3日記
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