『出世と恋愛』斎藤美奈子/講談社現代新書 ― 2023-07-13
2023年7月13日 當山日出夫
斎藤美奈子.『出世と恋愛-近代文学で読む男と女-』(講談社現代新書).講談社.2023
論じてあるのは、
夏目漱石『三四郞』
森鷗外『青年』
田山花袋『田舎教師』
武者小路実篤『友情』
島崎藤村『桜の実の熟する時』
細井和喜蔵『奴隷』
徳冨蘆花『不如帰』
尾崎紅葉『金色夜叉』
伊藤左千夫『野菊の墓』
有島武郎『或る女』
菊池寛『真珠夫人』
宮本百合子『伸子』
読んだことのある作品もあれば、名前だけ知っている作品もある。この本で始めて知った作品もある。が、総じて、近代文学のなかで代表的な小説を集めてあると言っていいだろう。
著者は断定する。
1.主人公は地方から上京してきた青年である。
2.彼は都会的な女性に魅了される。
3.しかし彼は何もできずに、結局ふられる。
近代日本の青春小説は、みんなこのようであるとする。
なるほどそう言われてみればそうかなと思って読むことになる。そして、この断定が一定の説得力を持つ。
近代日本の恋愛小説史であり、文学史の概略であり、全体として非常によくまとまっていると思う。部分的には異論はあるかと思うのだが、日本近代の青春小説、恋愛小説とはどんなものであるのか、おおざっぱに考えて見たいという向きには、適当な本ではないだろうか。
2023年7月12日記
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