『街道をゆく 郡上・白川街道、堺・紀州街道 ほか』司馬遼太郎/朝日文庫2023-08-08

2023年8月8日 當山日出夫

郡上・白川街道

司馬遼太郎.『街道をゆく 郡上・白川街道、堺・紀州街道 ほか』(朝日文庫).朝日新聞出版.2008

もとは、一九七二年から七三年、「週刊朝日」連載。

「街道をゆく」を読んでいる。始めは気の向いたところから読んでいたのだが、このごろは、最初の方から順番に読んでいこうかという気になっている。シリーズの四冊目になる。

収録するのは、

洛北街道
郡上・白川街道と越中街道
丹波篠山街道
堺・紀州街道
北国街道とその脇街道

一九七二年というと、高校生のころになる。高度経済成長、さらには、日本列島改造論の時代、戦後、日本の社会が大きく変わろうとしていたころとして、思い出される。どれも、紀行文として読んで面白い。

司馬遼太郎は、「観光」ということを忌避している。歴史上の著名な土地をめぐることはあっても、観光地としてではない。また、旅の予定を立てるときでも、新聞社のつてをたどって旅程を決めるということは、基本的にしていない。そこに行ってみたいと、地図を広げて考える、そんな旅である。

著者が旅先で感じとろうとしているのは、戦後になって大きく変わろうとしている、あるいは、変わってしまった日本の、古い光景と情趣と言っていいだろうか。そこに、司馬遼太郎ならではの、歴史講釈がふんだんに展開されることになる。

ただ、その歴史についての知識、歴史観というものも、今となってはちょっと古めかしい印象がある。このあたり、歴史学を専門にしている人が読めば、かなり不満に思うところがかなりあるかと思う。

しかし、紀行文としてはどれもいい。この本で、特に印象に残るのは、北国街道のあたり。街の蕎麦屋のシーンがいい。また、白川郷が現代のように観光地として整備される以前の様子をつづった文章もいい。どれも今となっては、貴重な歴史的な意味のある文学であると言えるだろう。

2023年7月11日記

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