映像の世紀バタフライエフェクト「イギリス王室の百年」2023-11-25

2023年11月25日 當山日出夫

映像の世紀バタフライエフェクト イギリス王室の百年 大英帝国の栄光と贖罪

英国王のことは、これまでの「映像の世紀」シリーズで幾度か出てきている。だが、英国王室にかぎって特集したというのは、これが初めてということになるかと思う。

ビクトリア女王については、名前を知っているという程度の認識であった。多くの子どもや孫がいて、ヨーロッパの多くの国と関係を持つことになる。その子どもや孫たちが戦ったのが、第一次世界大戦であったというのは、これは一つの歴史の見方であるといえる。

そのビクトリア女王の鮮明な映像記録はあまりないらしい。

演出の中でちょっと気になったのは、幼いエリザベスとマーガレットの会話。ここは日本語に訳してあったが、いわゆる女性言葉で話していた。あまりNHKは、女性言葉、男性言葉を使わないと思っているのだが、ここでは使っていた。

ダイアナ(皇太子妃)の結婚式のことは記憶にある。そのころ、ラジオのFM放送を聞いていて、その日に流れてきた曲が「いつか王子さまが」だったのを憶えている。

また、その死去のニュースのとき、たまたまテレビを見ていて、速報されたことも記憶にある。

私がものごころついてから、英国はエリザベス女王の国であった。その女王の崩御(と言っていいだろう)のことは、記憶に新しい。ちょうど、日本では、安倍元首相の国葬が賛否両論あるなかで強行されたときでもあったので、国葬とはこういうものかと、感慨深くテレビの報道などを見ていたものである。

この回ではあまり踏み込んではいなかったが、大英帝国の植民地支配の実態がどうであったかは興味のあるところである。強いて言うならば、日本の朝鮮や台湾などにおける植民地政策との比較が、どのようなものなのか。(おそらく専門の研究者の間では論じられていることだろうと思うが。)

ジョージ五世のインドでの戴冠式のとき、カラーフィルムで記録が残っていることは貴重なものであろう。

2023年11月22日記

英雄たちの選択「時代をひらいた博物大名たち」2023-11-25

2023年11月25日 當山日出夫

英雄たちの選択 時代をひらいた博物大名たち

番組の終わりの磯田道史の演説に賛同する。学問といっても、学術と学芸にわけて考えることができる。社会や国家のために有用であることを目指すのが学術であるとするならば、ただ知的好奇心のための営みが学芸である。さらにいえば、(番組では言っていなかったことだが)卓越大学(いいかえるならば、かせげる大学)などという企画が出てくること自体が、もう末期的症状である。GDPの増大に役立たないなら古典教育は意味がないという意見まで出てきている。

番組の内容としては、一八世紀に出現した、博物学に興味を持った大名たちのことに焦点をあてたものであった。魚の図鑑を作ったり、貝の図鑑を作ったり、鳥の図鑑を作ったり、である。

この背景には、広く一八世紀以降の江戸時代の文化のことがある。博物学に限らず、日本における様々な知的営みが発展をとげるのが一八世紀以降ということになろうか。付け加えて考えるならば、例えば本居宣長のことなどもふくめて考えてみると面白いかもしれない。目を西洋に転じれば、『百科全書』の時代でもある。

大名、武家が中心であったが、実際には裕福な商人などもふくめて、この時代として考えておくべきことになろうか。赭鞭会という博物学サロンのことは重要かと思う。共通の趣味的領域を通じて、身分を超えた人びとのつながりができる。この赭鞭会のルールを、近代になってから牧野富太郎が書き写していたことは興味深い。

寛政重修諸家譜については、名前を知っている程度である。その編纂にかかわった堀田正敦については、知るところがなかった。鳥の図鑑を作ったことは、この番組で知った。

博物学は、場合によっては軍事的外交的に国家の機密ともかかわる場合がある。シーボルト事件が一つの事例といえるだろう。その高橋景保の名前を、鳥の図鑑のなかに残していることは、博物学、学芸の世界の価値観を反映したものであったことになる。

2023年11月23日記