「平安時代サミット2024 本当に「平安」だったのか」 ― 2024-01-05
2024年1月5日 當山日出夫
平安時代サミット2024 本当に「平安」だったのか
これも『光る君へ』関連番組の一つということで、録画しておいて見た。
平安時代を考えるとき、どうしても中期から後期、一〇世紀から一一世紀あたりのことを中心に考えることになる。あるいは、摂関政治が頂点をきわめた道長、賴通のころを考えることになる。これは、これで『光る君へ』と関連させて平安時代を見るには、常識的なところかなと思う。
七九四年になったからといって、急に今年から平安時代、ということになったわけではない。この時点では、まだ平仮名による日本語の書記システムというようなものは出来上がっていない。これが確立することを確認できるのは、九〇五年の『古今和歌集』の成立をまたなければならない。
平安時代ということだが、たしかに『源氏物語』を軸に考えるのは、一つのあり方だと思う。だが、その他に資料、史料としては、公家の日記……代表的なものとしては、『御堂関白記』とか『小右記』とか……を見ることもある。和歌の歴史から考えることもできる。漢詩文のことから見ることもできる。この意味では『和漢朗詠集』などは重要な文献ということになる。少し時代が下るが、『今昔物語集』から見る平安時代は、また違ったものになるだろう。
昔、学校の教科書に出てきた平安時代は、国風暗黒時代があって、遣唐使の廃止があって、王朝貴族たちによる国風文化の花開いた時代、ということであったかと記憶している。
遣唐使の廃止というが、実際には中国との交易のあったことは、今では常識的なことがらである。唐物の存在ということがある。また、これは、私の専門の領域になるが、『白氏文集』の古鈔本である金沢文庫本を見ると、なかに「摺本」を見ていることがわかる記載がある。これは、おそらくは宋の板本である。宋から『白氏文集』の板本が、日本にもたらされ、読まれていたということになる。
律令制の時代から武士の時代へということにはなるだろうが、形式的には律令制は江戸時代まで続いたとみることもできる。征夷大将軍は、言うまでもなく律令制にもとづく地位である。そして、尊皇思想の歴史を考えることにもなる。
この番組では、荘園のことが出てきていなかった。平安貴族たちの経済的基盤はいったいどんなものだったのだろうか。このことにまったく触れることがなかったのは、ちょっと気になる。
それから、平安時代の一般庶民たちはどうであったのか。これは資料、史料が残っていないので、分からないというのが実際のところなのだろうが、しかし気になるところである。古文書、古記録、考古学資料、それから、『今昔物語集』などを総合的に見れば、なにがしかのイメージをつかむことができようかと思う。
日本の歴史を気候変動から考えるというのは、近年になってからの学問である。これが可能になったのは、年輪年代学の開発ということがある。たぶん、年輪年代学は日本が世界に誇ることのできる、重要な学問の成果の一つだと思っている。
ところで、このところ、『光る君へ』の関連番組をいくつか見ているが、どこかで見たような映像がたびたび使われている。まあ、これはそうなるのだろうと思う。番組を一つ作るごとに、資料の所蔵者に許可を取って撮影したり、再現映像を作ったりは、無駄である。使い回すの常識的なことかと思う。
2024年1月4日記
平安時代サミット2024 本当に「平安」だったのか
これも『光る君へ』関連番組の一つということで、録画しておいて見た。
平安時代を考えるとき、どうしても中期から後期、一〇世紀から一一世紀あたりのことを中心に考えることになる。あるいは、摂関政治が頂点をきわめた道長、賴通のころを考えることになる。これは、これで『光る君へ』と関連させて平安時代を見るには、常識的なところかなと思う。
七九四年になったからといって、急に今年から平安時代、ということになったわけではない。この時点では、まだ平仮名による日本語の書記システムというようなものは出来上がっていない。これが確立することを確認できるのは、九〇五年の『古今和歌集』の成立をまたなければならない。
平安時代ということだが、たしかに『源氏物語』を軸に考えるのは、一つのあり方だと思う。だが、その他に資料、史料としては、公家の日記……代表的なものとしては、『御堂関白記』とか『小右記』とか……を見ることもある。和歌の歴史から考えることもできる。漢詩文のことから見ることもできる。この意味では『和漢朗詠集』などは重要な文献ということになる。少し時代が下るが、『今昔物語集』から見る平安時代は、また違ったものになるだろう。
昔、学校の教科書に出てきた平安時代は、国風暗黒時代があって、遣唐使の廃止があって、王朝貴族たちによる国風文化の花開いた時代、ということであったかと記憶している。
遣唐使の廃止というが、実際には中国との交易のあったことは、今では常識的なことがらである。唐物の存在ということがある。また、これは、私の専門の領域になるが、『白氏文集』の古鈔本である金沢文庫本を見ると、なかに「摺本」を見ていることがわかる記載がある。これは、おそらくは宋の板本である。宋から『白氏文集』の板本が、日本にもたらされ、読まれていたということになる。
律令制の時代から武士の時代へということにはなるだろうが、形式的には律令制は江戸時代まで続いたとみることもできる。征夷大将軍は、言うまでもなく律令制にもとづく地位である。そして、尊皇思想の歴史を考えることにもなる。
この番組では、荘園のことが出てきていなかった。平安貴族たちの経済的基盤はいったいどんなものだったのだろうか。このことにまったく触れることがなかったのは、ちょっと気になる。
それから、平安時代の一般庶民たちはどうであったのか。これは資料、史料が残っていないので、分からないというのが実際のところなのだろうが、しかし気になるところである。古文書、古記録、考古学資料、それから、『今昔物語集』などを総合的に見れば、なにがしかのイメージをつかむことができようかと思う。
日本の歴史を気候変動から考えるというのは、近年になってからの学問である。これが可能になったのは、年輪年代学の開発ということがある。たぶん、年輪年代学は日本が世界に誇ることのできる、重要な学問の成果の一つだと思っている。
ところで、このところ、『光る君へ』の関連番組をいくつか見ているが、どこかで見たような映像がたびたび使われている。まあ、これはそうなるのだろうと思う。番組を一つ作るごとに、資料の所蔵者に許可を取って撮影したり、再現映像を作ったりは、無駄である。使い回すの常識的なことかと思う。
2024年1月4日記
映像の世紀バタフライエフェクト「ビートルズとロックの革命」 ― 2024-01-05
2024年1月5日 當山日出夫
映像の世紀バタフライエフェクト ビートルズとロックの革命
私は、一九五五年(昭和三〇)の生まれなので、ビートルズをリアルタイムで聴いたぎりぎりの世代ということになる。日本での来日公演のときは、テレビで見ていた。だが、その音楽に革命性を感じるには、まだ幼かったと思い出す。これが、少し上の年代になれば、ビートルズに大きな影響を受けた人びとということになる。
内容としては、ビートルズの活躍した一九六〇年代からの、若者の文化、強いて言えばカウンターカルチャーを、ビートルズの活動やそれに対する社会の反応を交えながら描いていた。見方によるのだろうが、ビートルズが革命を起こしたというよりも、時代の流れのなかにいて、その動きの中心に位置することになったと考えるべきだろうか。少なくとも、世界が大きく変わるきっかけになった存在であることは確かである。
「映像の世紀」のシリーズということもあるのだろうが、冷戦時代の東側諸国のことが多くあつかわれていた。ビートルズをどう受容するかという歴史が、まさに冷戦崩壊へとつながっていくことになる。番組では出てきていなかったのだが、中国などではどうだったのだろうかということが気になる。資料は残っていないのだろうか。といって、今の中国が、そうおいそれと情報開示して過去の資料を提供してくれるとは思えないが。
スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツが、ともにビートルズを聴いていたというのは、興味深い。世の中に個人で使うことのできるパーソナル・コンピュータが登場したころ……日本ではPC-9801のころになるが……それは、ある意味でカウンターカルチャーの象徴でもあった。それがいつのまにか、スマートフォンの時代になり、AIの時代を迎えて、大きく変容している。
音楽についていうならば、その後の日本のミュージシャンの多くは、ビートルズの影響をなにがしか受けていることになる。この意味では、ビートルズの登場以降の時代を生きてきたことになる。
2023年12月31日記
映像の世紀バタフライエフェクト ビートルズとロックの革命
私は、一九五五年(昭和三〇)の生まれなので、ビートルズをリアルタイムで聴いたぎりぎりの世代ということになる。日本での来日公演のときは、テレビで見ていた。だが、その音楽に革命性を感じるには、まだ幼かったと思い出す。これが、少し上の年代になれば、ビートルズに大きな影響を受けた人びとということになる。
内容としては、ビートルズの活躍した一九六〇年代からの、若者の文化、強いて言えばカウンターカルチャーを、ビートルズの活動やそれに対する社会の反応を交えながら描いていた。見方によるのだろうが、ビートルズが革命を起こしたというよりも、時代の流れのなかにいて、その動きの中心に位置することになったと考えるべきだろうか。少なくとも、世界が大きく変わるきっかけになった存在であることは確かである。
「映像の世紀」のシリーズということもあるのだろうが、冷戦時代の東側諸国のことが多くあつかわれていた。ビートルズをどう受容するかという歴史が、まさに冷戦崩壊へとつながっていくことになる。番組では出てきていなかったのだが、中国などではどうだったのだろうかということが気になる。資料は残っていないのだろうか。といって、今の中国が、そうおいそれと情報開示して過去の資料を提供してくれるとは思えないが。
スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツが、ともにビートルズを聴いていたというのは、興味深い。世の中に個人で使うことのできるパーソナル・コンピュータが登場したころ……日本ではPC-9801のころになるが……それは、ある意味でカウンターカルチャーの象徴でもあった。それがいつのまにか、スマートフォンの時代になり、AIの時代を迎えて、大きく変容している。
音楽についていうならば、その後の日本のミュージシャンの多くは、ビートルズの影響をなにがしか受けていることになる。この意味では、ビートルズの登場以降の時代を生きてきたことになる。
2023年12月31日記
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