「限界集落住んでみた 山形・滝の沢編」 ― 2024-11-25
2024年11月25日 當山日出夫
限界集落住んでみた 山形・滝の沢編
テレビの番組表を見ていて、たまたま見つけたので録画してあったものである。NHK山形のローカル番組で、この放送以外にもシリーズとして作っているらしい。これは、その43分拡大版である。
限界集落……そこでどういう人たちがどんな生活をおくっているのか、テレビ番組にするのは、かなり難しいかと思う。シリアスなドキュメンタリー番組にすることもできるし、また、「小さな旅」のように作ることもできるし、バラエティー番組として滞在記にすることもできるだろう。
まず、NHKがこのような番組を作ることの許諾からスタートすることになる。それに反対する人もいる。自分たちの生活のなかにテレビのカメラが入ってきて、見世物にされるのは嫌だろう。自分たちの村が限界集落として広く知られることにも、抵抗があるだろう。
そのような人びとが存在することを、隠すことなく、話をしてもらっている。そして、徐々にうちとけていく様子、一緒に食事をする様子などが、映し出される。これはこれで、一つの番組の作り方の手法だろうと思う。あるいは、このように、ディレクターが単身で生活しながら取材するという方式でこそ可能になったことかもしれない。
(ただ、気になるのは、本当に全員が理解して打ち解けてくれたのかな、ということがある。最後まで、自分は嫌だ、と拒否していた人がいてもおかしくはない。)
自分がたまたま不便なところに生まれただけ……という達観というか、覚悟というか、これはそうなのかと思う。そう思わなければ、このような村で生きてきて、これからも生きていこうという気持ちにはならないだろう。
棚田のある風景は美しい。だが、それを作り維持してきた人びとの生活がどんなものであったは、もっと知られるべきである。
田舎の生活を賛美するという言説がある。地方への移住を勧めるということもある。しかし、この村の掟は厳しい。法律的、公的にはどうであるかは別にして、その土地の人びとの生活のルールを守らなければならない。番組のなかで出てきたように明文化されたものばかりではなく、暗黙の了解というべきも多くあるはずである。
だから、こういう濃厚な人間関係が嫌で都会に出る、というのが、近現代の日本の人びとの大きな流れであったことはたしかである。いまでも、地方から都市、特に東京に出たいと思っている若者は多いだろう。
NHK山形でこのような番組が、ローカル番組の枠で作れるというのは、はっきりいって、山形県自体が、すでにいわば限界県といっていいからかもしれない。少子高齢化、過疎化、この流れのなかに、この地域全体がある。都市部の一部をのぞいて、日本のほとんどの地域にとって重大な課題である。目をそらすことはできない。
では、これからどうすればいいのか。
地方の村落の整理、居住地域の集約、ということが現実的な政策として、有りうることになるが、それを立案し実施するのは、かなり難しいだろう。しかし、日本の財政で、地方の限界集落を維持するためのインフラ整備にコストをかけていられない、ということも一方ではあるはずである。少なくとも、道路と電気は通さないといけない。これが、大規模な災害でもあって、道路網が寸断されてしまって、はたして復旧にコストをかける価値があるかどうか、判断を迫られることになる。いや、もう、地域によってはその判断が必須というべきところもあると、私は思っている。
地方創生などというきれいごとでは、対応できない状況に今の日本はおかれている、このことを覚悟した方がいいだろう。
どうでもいいことかもしれないが、番組のなかで、誰もスマホを使っていなかった。持ってはいるのだろうが、使っている場面は映っていなかった。パソコンも出てきていない。これが当たり前だったのが、つい二〇年ほど前までの生活だったのである。
さらに考えてみると、たまたま不便な土地に生まれただけ……という考え方は、これからの時代にどうなるだろうか。例えば、教育格差という問題(生まれによる機会の不平等)は、この世の中とはそんなものと諦められることになるだろうか。それとも、公的に格差是正に踏み込むべきだろうか。公的な支援は、どこまでなら許されるものとして、多くの人びと(国民)の理解を得ることができるだろうか。人口減少社会における地域間の格差是正の論理は、教育格差の問題とどう関係することになるのだろうか。
それにしても、自動車を持っていない若いディレクターを一人、村に置き去りにして(?)取材する、というのもなんだか乱暴なような気もするけれど。
2024年11月19日記
限界集落住んでみた 山形・滝の沢編
テレビの番組表を見ていて、たまたま見つけたので録画してあったものである。NHK山形のローカル番組で、この放送以外にもシリーズとして作っているらしい。これは、その43分拡大版である。
限界集落……そこでどういう人たちがどんな生活をおくっているのか、テレビ番組にするのは、かなり難しいかと思う。シリアスなドキュメンタリー番組にすることもできるし、また、「小さな旅」のように作ることもできるし、バラエティー番組として滞在記にすることもできるだろう。
まず、NHKがこのような番組を作ることの許諾からスタートすることになる。それに反対する人もいる。自分たちの生活のなかにテレビのカメラが入ってきて、見世物にされるのは嫌だろう。自分たちの村が限界集落として広く知られることにも、抵抗があるだろう。
そのような人びとが存在することを、隠すことなく、話をしてもらっている。そして、徐々にうちとけていく様子、一緒に食事をする様子などが、映し出される。これはこれで、一つの番組の作り方の手法だろうと思う。あるいは、このように、ディレクターが単身で生活しながら取材するという方式でこそ可能になったことかもしれない。
(ただ、気になるのは、本当に全員が理解して打ち解けてくれたのかな、ということがある。最後まで、自分は嫌だ、と拒否していた人がいてもおかしくはない。)
自分がたまたま不便なところに生まれただけ……という達観というか、覚悟というか、これはそうなのかと思う。そう思わなければ、このような村で生きてきて、これからも生きていこうという気持ちにはならないだろう。
棚田のある風景は美しい。だが、それを作り維持してきた人びとの生活がどんなものであったは、もっと知られるべきである。
田舎の生活を賛美するという言説がある。地方への移住を勧めるということもある。しかし、この村の掟は厳しい。法律的、公的にはどうであるかは別にして、その土地の人びとの生活のルールを守らなければならない。番組のなかで出てきたように明文化されたものばかりではなく、暗黙の了解というべきも多くあるはずである。
だから、こういう濃厚な人間関係が嫌で都会に出る、というのが、近現代の日本の人びとの大きな流れであったことはたしかである。いまでも、地方から都市、特に東京に出たいと思っている若者は多いだろう。
NHK山形でこのような番組が、ローカル番組の枠で作れるというのは、はっきりいって、山形県自体が、すでにいわば限界県といっていいからかもしれない。少子高齢化、過疎化、この流れのなかに、この地域全体がある。都市部の一部をのぞいて、日本のほとんどの地域にとって重大な課題である。目をそらすことはできない。
では、これからどうすればいいのか。
地方の村落の整理、居住地域の集約、ということが現実的な政策として、有りうることになるが、それを立案し実施するのは、かなり難しいだろう。しかし、日本の財政で、地方の限界集落を維持するためのインフラ整備にコストをかけていられない、ということも一方ではあるはずである。少なくとも、道路と電気は通さないといけない。これが、大規模な災害でもあって、道路網が寸断されてしまって、はたして復旧にコストをかける価値があるかどうか、判断を迫られることになる。いや、もう、地域によってはその判断が必須というべきところもあると、私は思っている。
地方創生などというきれいごとでは、対応できない状況に今の日本はおかれている、このことを覚悟した方がいいだろう。
どうでもいいことかもしれないが、番組のなかで、誰もスマホを使っていなかった。持ってはいるのだろうが、使っている場面は映っていなかった。パソコンも出てきていない。これが当たり前だったのが、つい二〇年ほど前までの生活だったのである。
さらに考えてみると、たまたま不便な土地に生まれただけ……という考え方は、これからの時代にどうなるだろうか。例えば、教育格差という問題(生まれによる機会の不平等)は、この世の中とはそんなものと諦められることになるだろうか。それとも、公的に格差是正に踏み込むべきだろうか。公的な支援は、どこまでなら許されるものとして、多くの人びと(国民)の理解を得ることができるだろうか。人口減少社会における地域間の格差是正の論理は、教育格差の問題とどう関係することになるのだろうか。
それにしても、自動車を持っていない若いディレクターを一人、村に置き去りにして(?)取材する、というのもなんだか乱暴なような気もするけれど。
2024年11月19日記
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